所詮は初戦
マイペースに執筆させていただいてるので更新が遅いですが、ご容赦ください
勝手な自己解釈で現状を把握したつもりになっている俺たちは、まずは周辺の探索を行うことにした。
敵を倒せとも言われているので、油断しないように4人で話し合った。笹宮さん曰く「こういう時は一人になったり、自分が一番強いと思って先行やつから死んでいくもんだ」とのこと。全員その意見には賛成だった。必要なのは協力であり役割分担だ。隊列は2列行進、遠距離専門の圭吾さんと平さんは後方に位置し、前衛の俺と笹宮さんが前に出て進んでいく形となった。
もちろん自分たちの武器の性能を試してからの行進だ。残念なことにそれぞれの武器の性能は期待していたほど大したものではなく一番の高火力は平さんの杖だった。本人曰く詠唱と魔導陣の2種類が魔導術の発動方法があり、更には組み合わせることもできるとか。そして詠唱に多少の時間は掛かるが残骸のコンクリートを砕く事ができていた。最も組み合わせはやってみたができなかった。俺もコンクリートを切ることが出来たけど途中で止まってしまうし、笹宮さんも似たようなものだった。もっと色んな事が出来るはずなのに再現されていないのは残念だ。圭吾さんの弓もコンクリートに小さな穴を開けて貫く程度。実際はかなりのもんだとは思うけど、想像以下の性能だとのこと。きっと使っていくうちに強くなっていくんだろう。試している時に気付いたのは武器を出している時だけ身体機能が向上することだった。走るのは早いしジャンプしたら自分の頭以上に飛べたりとか、正直ワクワクした。衣食住に関してもまずは行動しなければ何もわからないということで探索が開始された。
文字通りのコンクリートジャングルを探索開始してから30分程経った頃だろうか。「ぎゃぎゃぎゃ」と耳障りな音がした。何かの声のようでもあったので音をたてないように、ゆっくりと近づいて行くと、緑色の肌に筋肉質な肉体、角材、バット、鉄琴コンクリートの欠片、スコップ、草刈り用の鎌、鍬等を持ち、鋭い牙があり、腰にはボロボロの布を巻いている化け物がいた。所謂ゴブリンってやつだろう。持っている物が現代に近いせいで違和感すごいけどな!身長も個体別だが大体150~170㎝程で意外と大きく、それが6匹いた。初見の敵にしてはテンプレなはずなんだけど、なんていうか…強そうだった。
「うわぁ、強そう」と、つい弱音を吐いてしまう。
圭吾さんも「いやー…これ意外とやばい相手かも?」と顔がひきつっている。
女性陣二人は冷静で
「まずは遠距離で数を減らしてーな、半分以上は削りてーわ」
「多分、圭吾君と私で一体ずつは仕留めれるんじゃないかな」
「魔導の巻き添えや弓の貫通でもっと増やせないか?」
「それだと威力が下がって最低一体も倒せないかもね」
「攻撃するなら確実に倒したいしなぁ」
なんて話している。
圭吾さんと俺も勇気を出して会話に途中参加した。
「まずは平さんの魔法の第一射直後に芥と笹宮さんが全力で近づいて一体ずつ仕留める。俺が弓で連射して残りのゴブリンを牽制しておく。それで一旦引いて体制を整えるヒット&アウェイ戦法でどうよ?」
圭吾さんが結構良い案を出してる気がするので「それなら半分に減らせるね」と乗っかっておく。
「一撃で倒せなかったらどうすんだよ、で、芥の意見は?」
と笹宮さんに聞かれ
「えーっと、メイン火力は圭吾さんと平さんにして、笹宮さんと俺は投石で牽制して、近づいて来たら接近戦するっていうのは、どう、かな。」
と背中に汗をかきながら弱気な提案をしてしまう。正直、笹宮さんになんて言われるかと思っていたけど「そっか、そういう手もあるか」って納得された。でも平さんには「ずいぶん弱気なこと言ってけど、やる気あんの?」とキツメで否定的な意見を頂いてしまった。
結論として、敵一体分の戦闘力も分らないのに接近戦をするのは危ないから、と俺の戦法が採用された。ただし投石は極力足を狙うことにした。少しでも機動力を削ぐためだそうだ。じわじわと戦力を削って削り切る。もし近接戦闘となったときでも少しでも弱らせておけるので良いとのことで意見が合致した。
それぞれの立ち位置も決めておいた。ゴブリンに近づいて隠れながら投石するのが俺と笹宮さん、コンクリートを砕いて丁度良い感じの欠片を作ってストックしておく。二人の間の後方に平さん。圭吾さんは俺たちと離れすぎない程度に自分で場所を選び状況に応じて位置を変えていく事となった。一番敵からよく見えるのが平さんになってしまうが、魔導術の発動場所は目視しないと設定できないのでこのような形となった。
みんなの準備が整ったので奇襲を開始した。
まずは圭吾さんが覇雷弓で一番体の大きいゴブリンの頭を打ち抜いた。
覇雷弓には矢が必要なく使用者の気が自動的に矢形となり、意識的に様々な特性のある矢へと変化させることができる。今放ったのは「貫速一矢」と、読んで字のごとく貫通力と速さに重点を置いた矢らしい。
荒てた様子のゴブリン達は周囲を見渡す。
直後に平さんの現状最強の詠唱魔法を発動。
「灯に、裂き宿りて、破ずる型」
人ひとり分の頭ほどの大きさの火球をゴブリンに向かっていく。ゴブリンに火球が当たると、パンッと小さな音を立てて爆発。ゴブリンの腕と体の半分を吹っ飛ばした。これで残り4体。
平さんは詠唱魔法は言葉に出すまでに酷く集中力が必要で数秒の沈黙の時間がメインになっている。詠唱はあくまで発動するためのトリガー的な役目なのだと話していた。ただ言えば良いというものではないらしい。
俺と笹宮さんは武器を出して身体能力が上昇した状態で執拗に残りのゴブリンの足を石で狙い投げていた。そんなことをしているもんだから一番に狙われるのは当たり前なんだけど、そこは圭吾さんが連射特性へ切り替えてくれており、牽制のおかげでゴブリン達はなかなか俺たちのところにたどり着くことができていない。やはりというべきか連射は威力が落ちるので当てて刺すことはできても倒すことができない。そこで圭吾さんに向かおうとする奴もいたけど、投石で邪魔をする。これを繰り返し平さんの詠唱を待つ。もう完全に平さんの詠唱魔導頼りになっている。ゴブリン達は徐々に傷が増えていき2発目の魔導が発動する。これで残り3体となった。ここで想定外のことが起きた。一匹が平さんに向けて鎌を投げやがった。その後に死んだ仲間のバットを拾い、角材を持った奴とスコップを持った奴3匹ですごい勢いで平さんに向かって走り出した。矢は完全に無視していた。鎌は平さんに当たらなかったが、急いで隠れたので魔導術発動の集中力が途切れてしまう。しかも奴ら足が速い。このままじゃ平さんの所に着くのは時間の問題だ。さっきまでは奇襲された戸惑いもあり動作が鈍かったのかもしれない。
平さんを守るために俺と笹宮さんが武器を構えて3匹のゴブリン達の正面に躍り出た。
初めての接近戦だ。やってやろうじゃないか!!
説明ごちゃごちゃして分かりにくい?