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第一話

 なんだろう、風が吹いていて何か匂いを運んでくるのが分かる。

 耳に届くのは、水の中にいるかの様なハッキリとしない音がしていて、それは次第に自分に呼び掛けているように思えた。

 まだ眠っていたい衝動に駆られるが、起きなければいけないとも思う自分がいる。


 「良かった、センセー!ニャオが目を覚ましたっ!」


 自分はどうなっているんだ?地面に横たわっているのは分かる。空が見えるからだ。

 自分の様子を見守る老若男女の人?がいる。見たことのない人達だ。子供に至っては、顔が猫の様な子もいれば一つ目の子もいる。

 理解が追い付かない、今日はハロウィンだったか?


 「ナオ、大丈夫ですか?立てますか?」


 修道服を着た年配の女性が現れた。目元にある皴は女性の優しそう印象を受けた。

 誰かは分からないのに、まるで祖母と一緒にいる様な安心感がある。


 「どうしました、ナオ?あら、頭を打ってしまっているのね」


 修道服の女性は、そう言うと自分の頭にそっと手を添えた。

 手を当てた場所は、暖まってきた。

 段々と、その暖かさが心地良くなってきたのか眠気が襲ってきた。


 「さぁ、安心して。頭の怪我は大丈夫ですよ、今はまだ眠りなさい」


 その言葉が妙に意味の分からない自分を落ち着かせたのか、眠気に身を任せるのだった。




 次に目を覚ましたのは、何処か部屋の中のようだ。

 コンクリートとは違うレンガか何かで作られたような部屋である。

 自分が寝ているベッド以外には、小さな台と椅子があるだけだ。自分の部屋で無い事は確かだ。

 ふと気配を感じて、そちらへ目を向けると顔の真ん中あたりにある大きな目と目が合った。


 「あ、院長先生呼んでくるね」


 慌てて、何処かへと走り去る少女に何も声を掛けられなかった。

 ドッキリか?それともハロウィン?

 すぐに足音がして、一つ目の少女と猫の様な顔をした少女が現れた。

 そして、あの時の修道服の女性だ。彼女は、自分の額に手を当てると熱を計っているようだ。


 「うん、よかったわねぇ。熱も下がったみいね。顔にも生気が戻ってきているわ。あなた達も心配だったでしょう。ナオはもう大丈夫よ」

 「良かったー」

 「ごめんにゃ、ニャオ。ウチのにゃげた球が頭に当たってしもうた」


 猫顔の少女がしょんぼりとした顔で謝ってきた。耳や髭がまるで、怯えた子猫の様に見える。

 一つ目の子は、安心したのか大きな瞳はウルウルとしている。


 「ナオ?どうした?」


 不思議そうな顔をしていたからか、修道服の女性が自分の顔を覗き込んできた。

 黙っていても仕方ない。正直に話しかない。


 「あの、誰ですか?」


 三人の表情が固まった。

 それから、一つ目の少女と猫顔の少女が自分に詰め寄ってきた。

 近い近い、もう少し下がってほしい。布の服だろうか、色々と危険だと思う。


 「うーん、頭をぶつけているしねぇ。こういう場合に記憶が抜け落ちることが有るらしいし」

 「ウチのせいやん!ノンノー」

 「クララっ!どうしよう、どうしよう?」


 少女二人の名前は分かった。猫顔の子がクララで一つ目の子がノンノと言う様だ。

 でも、なんだこの違和感は。あ、そうか。目の前の二人の違和感だ。表情豊かの動くそれはハロウィンのコスプレではあり得ないような動きだ。

 それが、怖いとか感じていない自分がいる。


 「クララ、ノンノも落ち着きなさい。ナオ、私の事は覚えているかな」

 「すみません、貴方の事も分かりません。でも、頭の痛みが治まったのは、えっと院長先生のおかげですよね」


 「ありがとうございます」と言うと、彼女は自分の頭に手を添えて優しく撫でる。

 怪我は無いようだと言って、彼女は手を離した。

 泣いている二人を宥め、自分の為に何か食べる物を持っておいでと言って部屋から出す。

 それから、ここが何処か教えてくれた。

 ウラエと言う街の孤児院で、彼女はオハナと言うそうだ。院長をしていると言う。

 聞いたことのない街の名前だが、何処だろう。


 「貴方の名前はナオ、赤ん坊の頃に孤児院の前に置かれていてね」

 「えっ?赤ん坊の時?」

 「そうよ、不思議かしら?みんな初めは赤ん坊だもの」


 水を持ったクララがまず戻ってきた。喉が渇いていると思って先に来たのだそうだ。

 ありがとうと言って受け取ると、水に自分の顔が映った。

 黒髪の少年がそこに映った。まるで、子供の頃の自分を見ている様だ。

 え、え?どういう事だ?若返っている。


 「なんだか、自分の事を見て驚いているわねぇ。まぁ、ゆっくり思い出していけばいいわね」

 「そんな事でいいんですか」

 「悪く考える必要は無いわ。あなたは健康体で怪我も治癒しています、慌てる必要は無いわ」


 そんなものなのだろうか。

 一つ目の少女がスープの様な食事を持ってきた。

 「ありがとう」と、言って一口飲んでみる。薄い、色々と足りないだろうが不思議と身体が暖まってきた。


 「に、にゃあ、ナオ?ウチとノンノの事忘れたん?」

 「ごめん、全然思い出せないんだ」

 「そっか……。でも、ウチら三人はおにゃい年でにゃか良かったんよ?」


 クララの言う事に、ノンノも首を縦に振って肯定している様だ。

 そして、約束があるという。


 「ナオとクララ、ノンノの三人は、この国では成人として扱う生まれて十三年だ。孤児院からは出なければならないんだ」


 院長のオハナは、寂しそうに言う。

 今日は協会ギルドから職員が孤児院に来ているのだそうだ。

 魔力マテリアルの測定を行うという。十三歳になると国民は受ける義務があるのだそうだが、魔力マテリアルと言われてもピンと来ない。


 「不思議そうな顔をしている。それも忘れてしまったか」


 世界に広がる魔素マナ

 魔素マナ魔法マホウの源であり、この世界に生きる全ての物は魔素マナを身体に取り込み、魔力マテリアルに変換して魔法マホウを使役する。

 魔力マテリアルは、その人物がどの程度使いこなせるのかと考えればいいとオハナが教えてくれた。

 魔素マナがあって、魔力マテリアルに変えて魔法マホウを使う。これくらいでいいか。


 「ナオが起きる前に、二人は測定は終えているのだ。また改めて協会ギルドで測り直しても良いが、どうする?」


 協会ギルドの職員がわざわざ来ているのだから、測っておいた方が良さそうだ。 

 オハナに伝えると、応接室へと案内してくれた。

 ちょっとだるいが、歩くのには問題無さそうだし気になるのは小さくなった身体に慣れていない違和感だろうか。

 クララとノンノも一緒に付いて来てくれるようだ。

 応接室に入ると、また知らない人がいる。

 少し古いテーブルの上には、拳大の水晶玉が置かれている。


 「院長、そちらの子が?」

 「はい、そうです。今日で測定をお願いします」

 「分かりました。君がナオ君だね、それではそこに座って。そうしたら水晶玉を両手で持って下さいね」


 言われた通りに水晶玉を持つ。

 それから、しばらく待ったのだが何も起こらない。

 違う、みんな動きが止まっている?


 「やぁ、ナオだね。何も緊張しないで良い」

 「うわっ?!」


 誰も動かない世界で、さっきまでいなかった人物が増えていた。

 そこにいるのは分かるのに、男なのか女なのか分からない、若いのか年配なのかさえも。


 「あぁ、何も怖がらないでも良いんだ。どうも、上手く消えていなかったのか前の君が現れたようだから様子を見に来たんだ」


 前の自分とはなんだ?前世の記憶とか、そういう事を言っているのだろうか。


 「そう、その通りだ。記憶を持った君の居た世界で輪廻転生、聞いたことくらいはあるだろう?似た様な物だ、魂が再利用されて君の魂は新たな命となって生まれたんだが不幸が襲った。孤児となるのは君だけでは無いから、日常で起こりうる事なんだが」


 何が引き金かは分からない。

 前世と今、二つの魂は混ざって融合している。

 だからこそ、文字も読めるし言葉も話せる。

 それだけ?それだけを言う為にこの謎の存在は自分に会いに来たのだろうか。


 「君の居た世界とは大分勝手が違う。まぁ、世界がどんな方向に進むかは私見守るだけだ。好きに生きるといい。今は何も君には望んでいない。人生を謳歌したまえ」


 目を離したわけでもないのに、そこにいたはずの得体の知れない何かは消えていた。




 「ナオ?」


 気が付けば、人形の様に動かなくなっていた周りのみんなは普通に動いている。

 何だったんだろう。


 「うん、もう水晶玉を離しても良いよ」


 何か変わったのだろうか。協会ギルドの職員は水晶玉をマジマジと見ている。

 緊張して待っている。


 「ナオ君、君の現在の魔力マテリアル第二級セカンドだね。成人を迎えたばかりでこれ程とは」

 「それって、良い事ですか?」

 「まぁ、普通の人よりかは頭一つ飛び出ているよ。魔力マテリアルは、これから先、訓練で成長していくからね」

 「ニャオ、凄いにゃ。ウチとノンノは、第三級サードだったにょに」

 「君達だって、凄いんだよ。魔力マテリアルを上手く使いこなせない人達もいるんだから」

 「ありがとうございます」

 「それじゃあ、早速ですが」


 協会ギルドの職員は鞄の中から三枚の紙を取り出して、自分、クララ、ノンノの前に置いた。

 契約書と書いてある。


 「成人になると、孤児院にはいられないと聞いているよね?」


 肯定するように首を縦に振ると、ニコッと職員は笑う。


 「オハナ先生には話しているんだけれども、君達は協会ギルドへ登録しないかな」

 「登録とは?」

 「協会ギルドでは、傭兵として登録する事が出来る。勿論、仕事は様々だ。便利屋みたいなこともする事もあるが、何と言っても登録してしばらくは宿と一食分の御飯が付いてくるんだ」


 クララとノンノから、感嘆の声が上がる。

 確かに、寝る場所があって飯が食えると言うのはかなり待遇が良い気がする。

 しかし、こんな旨い話あるにだろうか。傭兵なんて、使い捨てされたりとか考えられそうだが。


 「あの、戦争が起こればそれに参加する必要があるんでしょうか」

 「戦争?参加する事は可能だが、傭兵は魔物マモノと戦ったり魔石マセキを回収したりはあるがね。勿論、場合によっては賊に身を落とした者達と戦うこともあるだろう」


 本当にどうするべきか。クララとノンノは自分の顔を伺っているのか二人の視線が感じる

 

 「明日の朝、登録してすぐ傭兵にはなれるんだが、外に出るのも初めての者もいるからね。君達三人だけ別の日に受けるよりは他の者たちとも一緒に講習を受けないか?」


 これは、あれだな。拒否権が無い感じがするな。

 でも、今の自分はこの世界のナオなわけで、どうしようか。


 「あとは、君達が頑張れば孤児院にも恩返しが出来ると思うよ」

 「そうだよ、ナオ?」

 「うんうん」


 傭兵か。何の因果かは分からないけれど、やってみるしかないか。この先に何があるかも分からないのだ。

 せっかく寝るところと働ける場所もあるのだから、何か良い道があればそこを選ぶのもいいかもしれない。


 「是非、お願いします」

 「それでは、まずはあなた達三人の登録と支給品や武器を用意しなければ」


 早い方がいい、と言う事で協会ギルドへと向かう事になった。

 オハナ院長先生に見送られて孤児院から出る。自分のとっては、初めての外である。

 テレビや写真で見た様な欧州であるそうな風景である。街中を走るのは車では無く、人や荷物を運ぶ馬車などが目につく。

 子供の姿は見当たらないが、空を見上げればまだ陽は高い。学校かもしくはすでに働いていたりするのだろうか。


 「あの、子供の姿が見えないですが?」

 「ん?そうだね、平民出身で、君達くらいの子はもう働いている子が多いよ。傭兵になっている子もいれば、国に仕える子もいる。貴族でない限りは、国に使えるのは中々難しいけれどね」


 ウラエ協会ギルド支部は、街の中でも一番大きな南側の門にある広場に面して建っていた。

 建物の扉も大きく、現在は開け放たれている。非常時には、避難場所の1つにもなるらしく、建物自体は頑丈な造りだそうである。

 建物の裏には、資材の搬入口もあるのだそうだ。


 「ようこそ、ウラエ支部へ。君達を歓迎するよ」


 登録する為に時間が掛かると思ったのだが、意外と早く終わってしまった。書類なんて簡単な物だった。

 登録した街、名前、年齢を記入。登録した後に、理由の無い活動停止犯罪を行うなどしなければ傭兵になった後は比較的自由に動ける。

 様々な依頼クエストを達成する事で傭兵個人の評価が上がり、それは名声に繋がる。

 評価は、この世界にある魔力マテリアルを伝達しやすい金属の名前で分かるようになっていた。

 アイアン、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ミスリル、オリハルコンだそうだ。


 「オリハルコンまでは遠いですね」

 「そうだね。やっぱり目指したいかい?」

 「なれるんですか?」

 「どうかな。オリハルコンなんて、まさに伝説だよ。過去には居たらしいんだけれどねぇ」


 プロパガンダってやつかもしれない。


 「次は、武具の支給だ。寸法を測ったりするからね」


 そう言って、別室へと案内される。

 同じ種類の服とズボン、靴が用意されていてパッと見た印象は軍服みたいだな、と思った。

 色は、黒を基調としている様で何の布かは分からないが少し厚手の様である。

 三人無事に採寸も終わり、次に案内されたのは地下室だった。

 様々な武器や防具の類が並べられている。


 「親父さん、新米の三人を連れてきた。支給品を準備してほしいんだが」

 「おう、おめぇか。整備はばっちりだ、いつでも持ってけるからよ。今度成人ねぇ、まだ俺からしたらガキなんだがなぁ」

 「それを言ったら、私もそうでしょうね」


 ドワーフという種族の店主が、奥から三人分の武器を持ってきてくれた。

 長さがあるようだが、なんなのだろうか。剣だったりするのかもしれない。短い槍のようなものかもしれないし、1体何なのかと考えていると予想は大きく外れた。

 魔法マホウなんて言葉もあるようだし、きっとそう言うものを期待するだろう?しかし巻かれた布を取り外すと、中から現れたのは銃だ。

 銃そのものというか、いや待て、理解が追いつかない。でも、生まれ変わる前は、銃が武器として戦争に使われていたのだから。

 当たり前、なんだろう、こんなファンタジーな世界でも使うのは銃なのだろうか?


 「見た事くらいはあるか?さすがに触った事はないだろうからな。すこし、裏で練習してけ」


 そう言って通されたのは、五十メートルほど離れた場所に的がある射撃場の様な場所である。

 テーブルが用意されていて、店主が別の一丁を持ってきた。


 「こいつは、魔法銃マテリアルガンと言ってな。魔力マテリアルを弾にして撃ち出すもんだ。まぁ、見てな」


 そう言うと、店主は魔法銃マテリアルガンを構えると狙いを定めているようだ。

 銃声は思っていたよりは小さい。しかし、銃口部分からは確かに弾の様な物が飛び出て的に当たっていた。

 

 「こいつは、持ち主の魔力マテリアルを弾として撃ち出すんだ。まぁ、面白みも減ったくれもない武器でよ」

 「ガスターさんっ!」

 「だって、そうじゃねぇか。一昔前までは、剣や斧といった殴り合いだったのに、こいつの登場で廃れ始めてんだから」

 「そのおかげで、魔物マモノとの戦いもだいぶ楽になったんですから」


 魔物マモノ

 生態も謎に包まれた生物である。

 倒す事で魔石マセキを残して死体は残らない事から、生態解明にストップを掛けているのだそうだ。


 「魔石マセキを残す事に、何か意味でもあるんですか?」

 「うん?いや、推測ではあるが魔物マモノの身体を構成するのが、魔素マナでありそれが凝縮されるかして魔石マセキとなっているのじゃないかと言われているよ」

 「しかも、この魔石マセキは生活の必需品ともなっておる。魔力マテリアルの少ない物にとってはこの魔石マセキから魔力マテリアルを取り出して使う事が出来るのじゃ」


 今では、火をつけるのも水をろ過するのも魔石マセキがあればすぐに出来ると言うからすごいのだろう。

 夜、街を灯すのも魔石マセキなのだそうだ。


 「それじゃあ、魔物マモノを倒すの奪い合いもあるのでは?」

 「それが、そうでもないんだ。魔物マモノの数はある程度は減る事は確認されているんだが、魔物マモノは増えている。傭兵の仕事は終わらないよ」


 魔物マモノの間引き、魔石マセキの回収。

 他にも、商人の移動の護衛や新たな街の開拓の護衛など仕事の数も様々だと言う。


 「その為にも、ガキ共もこの武器の使い方をしっかりと覚えるんだぞ。何、簡単だからよ」


 魔力マテリアルを込めた魔石マセキを加工した弾倉マガジンを込める。

 ボルトをまっすぐに引き、狙いを定めて撃つ。


 「簡単じゃろ」


 実際に手に持ってみた感触は、普通に銃だった。

 少し重いかと思ったが、どうも使われているのは金属ではないようだ。

 木のようだが、他にも何か知らない物も使われているのかもしれないな。

 ノンノは、センスがあるのか初めて触ったにも関わらず的のど真ん中に当ててる。

 クララは的に当たるのは少ないが、周囲に連続して弾を集めるのは上手いようで二射目、三射目と撃つのが早い。

 自分はというと、その中間くらいだろうか。


 「やっぱり、リトルサイクロプスの嬢ちゃんの目は上等だ。猫の嬢ちゃんは動作が速いのぉ。早撃ちが向いてる。おめぇさんは、器用貧乏ってところか」

 「褒めてますか、それ?」

 「わっはっは」


 試射を終えて、上に戻ると協会証ギルドカードの用意と支給品が用意されていた。

 魔法銃マテリアルガン魔石マセキ弾倉マガジン、ナイフ、背嚢、カーキー色の上下のユニフォームが入っているそうだ。

 初回のみは支給されるそうだが、次回からは購入する必要がある。

 首から下げられるように、チェーンで繋がったカードは名前と階級が示されてる。

 依頼クエストの達成率などの情報は、協会ギルドで管理されているのだそうだ。

 初めて登録した際の階級はアイアン。カードの右下に小さな鉱石が付いている。アイアンなら鉄というように一目で分かるようになっている。


 「この協会証ギルドカードは忘れず、肌身離さず持っていて下さい。武器を持つ許可証にもなっていますので」

 「わかりました」


 登録を済ませ、孤児院へと戻る。

 帰り道は、これからどうしようかと話しながら歩いていた。

 傭兵になった事で、孤児院への恩返しも出来る事やこれからの生活の事だ。

 三人だから、きっとなんとかなるとクララとノンノは考えている。

 帰ったら、今日受け取った魔石マセキ弾倉マガジン魔力マテリアルを込めなければならない。


 「明日からすぐに孤児院を出なきゃならないのか?」

 「ニャオ?そうだにゃ。本当にゃら、すぐにだったにゃ」

 「うん。他の孤児院ならもう追い出されているところもあるんだよ」

 「そっか」

 「オハニャ先生は優しいにゃ。いつもそうにゃ」


 思い出そうとしても、優しくされた記憶がまったく思い出せない。

 それが、なぜだか凄く寂しい気がした。

 疎外感、とまではいかない。クララとノンノはきっと昔と変わらないのだろう。

 そんな自分がこの世界のナオとして生きていていいのだろうか。

 それは、分からない。

 でも、せっかく新たな命なのだから生きたいとも思う。


 「おかえりなさい、みんな。さぁ、今日は疲れたでしょう?」


 オハナ先生が出迎えてくれた。ささやかだが、先生はお祝いと称してちょっとしたご馳走を出してくれた。

 最後の夜、クララとノンノは大いに泣いて今日は先生と寝ると言って聞かず一緒に寝室へと入っていく。

 自分はと言うと、恥ずかしいと言って断ったのだ。部屋に戻って、魔石マセキ弾倉マガジン魔力マテリアルを込める。

 明日、ここからいよいよ離れる。自分にとっても、新たなスタートになるのだ、機体と不安が混ざったような不思議な気分で眠りに付くのだった。


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