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八十八話 お題:好演 縛り:差し当たり、大群、情死

 知人の男性から聞いた話である。彼は劇団の座長をやっているのだが、新作の舞台の準備中に、よりにもよって主演の俳優が恋人と情死してしまうという事態が起きた。

「報せを聞いた時は本当に目の前が暗くなったよ。そいつとは演技のことでしょっちゅう衝突したが、それでも実力はピカイチだったからなぁ。なんとか代役を探したが、これがなぁ」

 差し当たり今劇団にいる中で一番いい俳優を主演にしたのだが、やはり納得がいかない。彼が頭を抱えていると、劇団に所属している若手の女優が男性を一人連れてきた。

「いきなり彼いいと思うんですよって言われてよ。試しに演技やらせてみたらこれが上手い上手い。よし、こいつで行こうと思ったんだが問題が起きてな」

 どういう訳か、彼が演技をしていると蝙蝠の大群が稽古場の周りを飛び回るのだという。扉はおろか窓もきっちり閉めておかないと容赦なく中に入ってくる上、近隣から中で何をやっているんだという苦情も出始めるなど大騒動になってしまった。

「とはいえそいつを使わないってのは考えられなかった。それだけの演技ができるやつだったからな。あとはこいつのなんか知らんが蝙蝠が集まってくる欠点も芝居のために利用できないかと思ってよ」

 結果、新作の舞台は路線を大幅に変更しゴシックホラーものとなり、もちろん主演は蝙蝠を呼ぶ男性となった。あえて会場の扉と窓を開けっ放しにし、大量の蝙蝠が場内を飛び回る中上演したため彼の劇団は演劇界で一躍有名になった。

「まぁ使った会場からは出禁食らうしボロクソに言ってくる客も大勢いたが、それ以上にまさかこんな舞台をやるとはって声が多かった。俺としてはこれからも皆がびびるような舞台をやっていくつもりだよ」

 なんともたくましいことである。

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