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八十六話 お題:茶殻 縛り:コンクリート、捏ねる、鶫、李

 私の叔母の話である。叔母は自然が大好きな人で、庭に李の木を植えたり、そこに飛んできた鶫の写真を撮ったりしていた。私はそんな叔母が好きでよく家に遊びに行ったのだが、ある日叔母の家の仏壇にお団子のようなものが供えられているのに気がついた。近くで見てみるとそれはお団子ではなく、茶殻をお団子のように丸く固めたものだった。叔母にどうして仏壇にこんなものをお供えしてるの、と聞くと、

「あぁ、それね。子供が食べに来るのよ」

 と言った。叔母の言ったことの意味がわからずぽかんとしていると、叔母は話し始めた。なんでもこの家には子供の幽霊がいるのだという。

「見ててかわいそうになるくらい痩せててね。初めて見たのが急須を流しに持っていこうとして、落としちゃった時なのよ」

 急須を落とした時、中の茶殻が床に飛び散ってしまったため、叔母はティッシュを取りに行った。戻ってくると子供の幽霊が這いつくばって床の茶殻を貪っていたのだという。

「怖いっていうよりもあんまりにもかわいそうでねぇ。いくらなんでも床に落ちた茶殻なんか食べなくてもいいだろうって思って、お菓子とか色々お供えしたんだけど駄目でね。何か理由があって茶殻しか食べられないのかもしれないね」

 叔母は子供の幽霊が少しでも食べやすいようにと茶殻を供える時はお団子のようになるまで捏ねるという。やはりお腹が空いているのか、茶殻は頻繁になくなるそうだ。

「ちょうど今取っていったから、またお供えしないとね」

 仏壇の方を見ると、確かに茶殻がなくなっている。叔母は何事もなかったかのように、土と違って熱くなりすぎると夏場のコンクリートへの文句を言いだした。

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