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七十九話 お題:スプーン 縛り:黙然、七つ道具

 妻の友人から聞いた話である。彼女には息子がいるのだが、自分の物に強いこだわりを持つので苦労させられることが多いという。

「食器にもお気に入りがあって私は七つ道具って呼んでるけど、お箸、ナイフ、フォーク、スプーン、お茶碗、お椀、コップ、全部決まったやつしか使わないのよ」

 とはいえ食器は気をつけて扱えばそうそう壊れるものではないため、特にトラブルもなかったのだが、

「ある日このスプーンもう使わないって言い出したと思ったら、使わない食器がどんどん増えていくのよ。あんなにお気に入りだったのにどうしたのって聞いても」

 息子は黙然として何も答えなかったという。しかし彼女が根気強く理由を聞き出すと、

「ベロベロが舐めたから、汚いからもう使いたくない」

と言ったそうだ。ベロベロってなに? と聞いても息子ははっきりと答えず、彼女は奇妙に思いながらもそれ以上の追及はしなかった。

「何か怖い話にでも影響されたかな、くらいに思ってたんだけど、ある日見ちゃったの」

 それは家族揃って夕食を食べていた時だったという。彼女は箸を落とし、拾おうと床を見ると、何かが生えていた。

「30cmぐらいかな、そのぐらいある舌だった。それが私の箸に絡みついて舐めてたの。しかも伸び縮みしてたから本当はもっと長いんだと思う。あぁ、これがベロベロかってその時わかったの」

 幸い家を引っ越す予定だったため、ベロベロに悩まされた期間は短かったそうなのだが、それでも彼女は床に落ちたものを拾う時、一瞬ためらうようになってしまったという。

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