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七十八話 お題:白紙 縛り:転成、手頃

 以前街で大道芸を見た時のことである。その芸は口上によると観客からもらった紙を目の前で次々に転成させていくという芸で、大道芸人が、

「さあさ、この中で手頃な紙をお持ちのお客様はいらっしゃいませんか、ビラでも折り紙でもなんでも結構、まぁ私としては一万円札が一番やりやりすいのですが、もちろんすり替えたりなどはいたしませんよ!」

 と言うと、観客の中から一人の男がじゃあこれでやってみせてくれよ、と一万円札を大道芸人に渡した。周りからおぉ、と声が上がり、大道芸人はそれを聞いて嬉しそうに、

「それでは皆様、ご注目ください、一瞬たりとも目を離してはいけませんよ!」

 と言うと、一万円札を素早く振った。すると次の瞬間一万円札は同じ大きさの金属の板になっていた。観客から声が上がった。大道芸人が金属の板を振ると、金属の板は白い紙になった。大道芸人は白い紙を更にガラスの板や布切れに変えたあとで最後に元の一万円札に戻して終わろうとしたところ、何度やっても戻らなくなってしまった。初めは盛り上げるための演出かと思ったがどうも違うらしく、一万円札を出した男と大道芸人が口論になり、とうとう取っ組み合いの喧嘩を始めてしまった。あまりに二人の喧嘩が激しかったため観客の一人が警察を呼び、警官が到着した頃には大道芸人は頭を何度も踏みつけられ重傷だったという。聞いた話では一万円札を出した男はサクラで、日頃から大道芸人に対して不満を持っていたのだが、自分の渡した一万円札を元に戻さないのをどさくさに紛れてくすねるためだと思い暴行を働いたそうだ。なお大道芸人が何故布切れを一万円札に戻さなかったのか、あるいは戻すことができなかったのかはわからないままである。

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