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五十五話 お題:留め袖 縛り:入れ食い、サロンエプロン、チキンライス

 親戚の女性の話である。

彼女は独身であるにも関わらず冠婚葬祭の際には決まって留め袖を着る。まだ若く美人で、台所に立つ時はサロンエプロンをつけて、卵の半熟具合とチキンライスの味つけの両方が完璧なオムライスを作ってくれるような人なのだが、どうして結婚してないのに留め袖を着るのか聞いてみると、

「私は、今はお父さんのものだから」

 と言った。彼女の父親は既に他界している。詳しい話を聞いてみると、なんでも彼女は生まれつき幽霊が見える体質らしく、自分の家にいる父親の幽霊が見えているのだという。

「生きてる時は普通だったんだけどね、私のことが心配で成仏しなかったみたいで、それで私に対する感情がだんだんおかしな方に行っちゃったの」

 初めはお前のことはお父さんが見守っててやるから、と言っていたのが、次第にお前が変な男に騙されたらお父さん許せないなぁ、と言うようになり、やがてお前はお父さんと結婚すればいいんだよ、そうすれば悪い男に苦しめられることもない、と言うようになってしまった。

「本当は家を出てお父さんのいないところで暮らしたいんだけど、お父さん、私じゃなくてお母さんと妹にあたるの。もう理性とかずいぶんなくなってて、文句とか愚痴とか言っても何もないんだけどね。それでも私が男の人と仲よくなろうとするとお母さんか妹か、ひどいと両方に悪いことが起きるの。だからいつになるかわからないけど、お父さんが何もわからなくなるまでこういう風に生きていくしかないんだ」

 冠婚葬祭で留め袖を着るのは、そうしないとやはり彼女の父親の機嫌が悪くなり、彼女の母親と妹に悪いことが起きるからだという。恋愛をしたいと思えば入れ食いのようにいい男性と次々につきあえるだろうに、実にもったいないことである。

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