五十一話 お題:親権 縛り:発動、帯電、今際の際
昔、本で読んだ話である。ある国の貴族の家に奇妙な赤ん坊が生まれた。その赤ん坊は生まれながらに帯電しているかのように、触れると触れた人の体が痺れたという。赤ん坊の父親は悪魔が取り憑いているとして修道院に預け、悪魔を払ってもらうことにした。母親は猛反対したが、当時は子供は父親の所有物であり、赤ん坊の父親は強権を発動して半ば無理矢理に修道院に預けた。赤ん坊は修道院でも当然のごとく嫌われた。そもそも悪魔が取り憑いていると言われて預けられた子供であり、しかも触れると体が痺れるというはっきりした異常がある。赤ん坊は育てられはしたものの、周りの人間から恐れられ、大きくなってからは悪魔を払うためという理由で虐待を受け続けた。預けた時は悪魔さえいなくなれば修道院から連れ戻そうと思っていた父親も、子供がもう一人産まれたことでその気もなくなっていた。赤ん坊は少年になったが、同年代の子供と比べて明らかに体格が小さく、周りの人が触れるどころか近づきたがることすらなかったため会話の習得も遅かった。やがて彼は度重なる虐待によって弱り、食事も取れなくなって餓死した。今際の際に彼はやっと覚えた言葉で、
「神様、どうして僕に人を遠ざける体をお与えになったのですか」
と呟いたという。