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四十六話 お題:フィルター 縛り:背腸、フラップ、反り返る、主賓

 知り合いの女性から聞いた話である。その日彼女は女友達の誕生日を祝うため、家でパーティーの準備をしていた。料理に使うエビの背腸を取っていると、パーティーの参加者の一人である男性が訪ねてきた。パーティーの主賓である女友達が来るまでにはかなり時間があり、手伝いに来てくれたのかと思っているとどことなく様子がおかしい。

「その人普段はすごく身だしなみに気を遣う人なんだけどやけにだらしないっていうか。寝癖を直してなかったり髭を剃ってなかったり、ジャケットのポケットのフラップも必ず出す人なんだけど両方とも中に入ってたしね」

 男性は彼女が挨拶をしてもはっきりと返事もせず、すぐに部屋のエアコンの方へと行ってしまった。

「手伝いもせずに何しに来たんだろうって腹が立ったんだけど、でも様子も変だし料理の支度もあったから時間をおいてまた声をかけようと思って」

 少しして料理の支度が一段落し、彼女が男性の様子を見に行くと、

「後ろから近づいていったから最初は何してるのかわからなかったんだけど、見たらエアコンのフィルターを持ってて、しかも何かを口の方に運んでるから、まさかと思ったら」

 男性はエアコンのフィルターに溜まった埃を綿飴のように少しずつちぎって食べていたのだという。思わず彼女は何してるの! と叫んだ。男性はその場で後ろに反り返ると、背後にいた彼女に逆さまになった顔でニタ、と笑いかけ、

「これはあぁ、とおってもおぉ、おぉいしいぃですねえぇ」

 直後、ベリ、という鈍い音がして男性の腰から上が床に落ちた。彼女はそれを見て腰を抜かし、その場に座り込んでしまった。

「ほんとにもう呆然としちゃって、悲鳴なんか上げてる余裕なかったよね。でもとにかく警察とか救急車とか呼ばなくちゃいけないと思って携帯電話取ってきて、状況を説明しろって言われた時のために見たくないけどその人がどうなってるか見てみたら」

 そこにあったのは人の体ではなく、人間大の埃の塊だったという。

「正直もう足にきてたからダウンしたかったんだけど、折角のパーティーを中止にするわけにもいかないし、もう急いでゴミ袋につめて隠して、準備の方もどうにか終わらせたよ」

 彼女の努力の甲斐あってパーティーは大成功に終わったそうだ。なんともすさまじい精神力である。

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