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三話 お題:螺 縛り:先高、在住、僻地、加齢、舵

 最寄り駅から車で二時間という僻地に在住の私の叔父は元カニ漁師である。一時期は船長として漁船の舵を取っていた叔父は、ある日突然漁師をやめると海から遠く離れた今の家に引っ込んでしまった。加齢による衰えからやめたのだろう、と思っていたのだがどうやらそうではないらしく、たまたま会う機会があったので事情を聞いてみることにした。私が叔父にどうしてやめたの? と聞くと、叔父は俺が右目見えなくなった時のこと話してなかったか、と言って話し始めた。叔父がカニ漁師をやめた年はカニがあまり捕れず、価格が高騰した。あらかじめカニの価格の先高を見越していた叔父はこれを好機と考え、危険な海域での漁を敢行して成功、大漁に次ぐ大漁だったという。そしていつものように獲ったカニを船から降ろしていると、甲板に貝殻が一つ落ちているのを見つけた。形はよく見る螺貝だが色が雪のように真っ白で、手にとってみると中で何か動いたように見えた。覗き込むとそこには“風景”が広がっていた。

「風景ってどんなの?」

「そうだなぁ、竜宮城が一番近いかなぁ、映画の特撮とか全然目じゃあなかった」

 叔父はカニを降ろす作業も忘れて、夢中になって貝殻の中の“風景”を見続けた。そして突然、何かに右目を突かれた。

「それ以来見えなくなっちまったんだよなぁ」

 私が船に乗れなくなって辛かったかと聞くと、

「それも辛かったけど、もしまたあの貝殻見つけたらまた覗いちまうからなぁ、そっちの方が嫌だったな」

 叔父は螺貝の刺身を噛みながらそう言った。

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