表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/302

三十七話 お題:帰り 縛り:配役、飛び散る、ネクタイ、十六夜

 知人の舞台俳優から聞いた話である。その日彼は新作の舞台の配役で自分が端役であることに腹を立て、監督と大喧嘩をしてしまった。ひどく憂鬱な気持ちで帰路につき、ふと空を見上げると綺麗な十六夜の月が浮かんでいたのを皮肉に思ったそうだ。彼はいつも乗る電車に乗り込み、座席に座ってぼんやりと今日あったことを思い返していた。すると突然、自分の目の前に座っていたサラリーマンが座席から転がり落ち、床でもがき始めた。

「俺も含めて何人も大丈夫ですかって声かけたんだけど、多分何も聞こえてなかったと思う。苦しくてたまらないから、とにかく近くの人にすがりつくって感じだったよ」

 彼の言葉通り、そのサラリーマンは自分の周りの人達の足にしがみついては振り払われる、ということを繰り返していたという。そして彼もサラリーマンにしがみつかれ、振り払おうとしたところ転倒してしまった。

「そのサラリーマン、這って俺の上に乗っかってきてさ、顔が目の前のところまで来て、しかもその顔があんまり辛そうだったからさ、とっさにネクタイほどいてワイシャツの首のボタン外したんだよね」

 直後、サラリーマンの口から大量の血が吹き出した。彼の顔が真っ赤に染まったのはもちろん、辺り一面に血しぶきが飛び散るほどだったという。

「結局電車が止まってその後は鉄道の人が対応してくれたけどさ。俺も人の血を浴びたから念のため病院行って、まぁ異常はなかったからよかったよ」

 彼はその時の体験を元に断末魔の演技に磨きをかけ、監督から重要な役をもらうことも多くなったそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ