三十四話 お題:百姓 縛り:整頓
俺の地元ではどの家も怠け者や身の回りを整頓しない者に対してやたらと厳しいのだが、どうもこの辺りに伝わる昔話が原因のようなので、暇つぶしに調べてみるとそれらしい話が見つかった。なんでも戦国時代に、この辺りで非常に大きな合戦があったのだそうだ。武将、百姓ともに多くの死者が出た上怪我人の数は更に多かったので死者の供養さえままならず、見渡す限り地獄のような景色が広がっていたという。それでも動ける者達が総出で死体を埋めるための穴を掘ったり、死体を運んだりしていると、突然放置されていた何十体もの死体が動き出した。その場にいた者達は皆逃げ出したのだが、死体達は特に追いかけてくることもなく、それどころか掘っている途中だった穴をどんどん掘り進めていき、十分な広さになるとそこに自分達以外の死体を次々に投げ込み始めたのだという。逃げ出した者達も死体達のその様子を見て死人に死人の供養をさせるとはあまりに偲びない、と一緒になって働いた。そうして全ての死体を穴に投げ込み終わると、それまで動いていた死体達は糸が切れたようにその場に崩れ落ちたという。以来この辺りでは死んだ後も合戦の後始末をするために働き続けたその死体達を見習って、生きている者は決して怠けてはいけない、整理整頓は徹底して行わなければならないということになったらしい。正直なところ怠け者で片づけられない人間である自分は肩身が非常に狭いので、なるべく早く出ていこうと思っている。