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三十一話 お題:莢 縛り:圧倒

 中学の時の同級生から聞いた話である。彼には仲のいい弟がおり、夏休みになると一緒に祖父母の家に行って泊りがけで畑仕事の手伝いをしていたそうだ。

「毎年夏になるとじいちゃんの作った枝豆が楽しみでさ、俺も弟も枝豆が大好きだったから」

 その日も彼と弟は枝豆の収穫に精を出していたという。彼が一旦作業の手を止め、体を伸ばしていると不意に兄ちゃん、と弟の声がした。

「どうしたんだって聞いたら、小さい人をつぶしちゃったって青い顔で言うもんだからさ」

 詳しい話を聞いたところ、弟が枝豆の莢をむしっていると明らかに莢でない感触のものを握ったのだという。確認してみると絵本に出てくる小人そのものの小さな人間が手の中に収まっており、弟に対してよくも捕まえてくれたな野蛮な人間め、俺を傷つけた分だけお前も傷つくことになるんだ、俺を殺したらお前も死ぬんだぞ、わかったらさっさと離せ間抜けな小僧、などと聞くにたえない暴言を吐いてきた。その剣幕に圧倒された弟はついカッとなってその小人を握りつぶしてしまったという。

「悪戯とか冗談は好きだったけど、ここまで子供っぽいこと言うやつでもなかったからさ。かえって本当じゃないかって思ったよな」

 彼は弟にあとは自分がやっておくから手を洗って休むように、と言うと作業を再開した。しばらくして作業が一段落すると、彼は弟の様子を見に祖父母の家に戻った。家には人の気配がなく、じいちゃんもばあちゃんも出かけているのか、と思い彼が弟の姿を探すと、弟は居間で寝転がった姿勢で冷たくなっていた。救急車を呼んだが間に合わなかった。

「そりゃさ、小人を殺しちまった弟が悪いんだってことはわかるよ。でもどうしても納得できねぇんだわ。なんであいつが死ななきゃならねぇんだって。どこにいても何をしててもさ、気づいたら弟がつぶした小人と同じやつを探してるんだよ。八つ当たりだってのは百も承知だけど、それでもつぶしてやりたくてたまらない。それで俺が死ぬんだとしてもさ」

 彼は今祖父の畑を受け継ぎ、農家をやっている。

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