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二十九話 お題:補給 縛り:なし

 知り合いの男性から聞いた話である。その日彼は秘湯と呼ばれる山奥の温泉に行こうと車を走らせていたのだが、道中で何度も迷ってしまい、ガソリンの残りが怪しくなってしまったのだという。

「まぁ秘湯って言われてるくらいだから、そりゃ辺鄙な場所にあるんだろうとは思ったけど正直予想が甘かったね。このままじゃ山奥でガス欠起こして助けを呼ぶなんてことになりかねないなって焦ってたんだけどさ」

 悪運が強いのか、彼はどうにか車が止まる前にガソリンスタンドを見つけることができたという。山奥のスタンドにしては妙に手入れが行き届いていたそうなのだが、きっと温泉に行く途中でよる人が多いのだろう、と彼は特に気にもしなかった。

「スタンドの店員さんも気のいい人でね。このところ客が来なくて寂しいから、よかったら少し話し相手になってくれないか、なんて言われてさ。俺は旅先で人と話すのが好きだから何だかんだで結構話しこんでたよ。そしたら話し相手になってくれたお礼だ、なんて言うもんだから缶コーヒーでもくれるのかなと思ってたら」

 この車はもう二度と給油しなくていいよ、と言われたのだという。聞き返しても店員はそういう風にしておいたから、としか答えず、彼は若干不安になりながらもガソリンのメーターが満タンになっているんだから走れるだろうと車を発進させた。その後は特に迷うこともなく温泉に辿り着き、彼はそこでゆっくりと羽を伸ばすことができたという。

「まぁ結局いい温泉旅行だったんだけど、問題は車なんだよ」

 どれだけ走ってもガソリンが減らなくなっていたのだ。燃料計が壊れたのかと思い、点検してもらったが異常は見つからなかった。一度車が止まるのを覚悟でどこまで走れるかを試したそうなのだが、走行距離が3000km増えても止まる気配は全くなかったという。

「こりゃいよいよとんでもないことになったなと思ってさ、いや、そりゃ便利は便利なんだけど」

 果たしてこの車で車検を突破できるのか、彼は今真剣に悩んでいるそうだ。

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