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二百九十五話 お題:脚 縛り:獲る、投げる、弊害、下萌え、老体

 近所に住むお爺さんの話である。お爺さんは悪い人ではないのだがホラ吹きなところがあって、とても信じられないようなことをよく私に話した。

「俺が若い頃は熊を獲るのに槍を使ったんだ。俺は村一番の槍の名手って言われててな。どんな些細な熊の唸り声も聞き逃さなかったし、槍を投げると槍が熊の体を通り抜けて、そのままどっかに飛んでいっちまうこともしょっちゅうだった。だが今はこの通りの老体だ。目も耳も、腕も脚もすっかり弱っちまって、もう槍じゃあ熊は殺せないかもしれん。まぁ世の中すっかり便利になってそんなことしなくても暮らせるようになったけどな」

 私はまたいつものホラ話かと思い、お爺さん槍投げでオリンピックに出ればよかったんじゃないの、と適当な相槌を打った。すると、

「あぁ、オリンピックか。確かに出てれば金メダルもらえたかもしれねぇなぁ。今の若いのも頑張っちゃいるが、俺の村にいたやつらと比べるとどうしてもひ弱に見えちまう。これも世の中が便利になったことの弊害ってやつかねぇ」

 お爺さんはそう言って庭に下り、石を一つ拾うと空に向かってその石を放り投げた。直後、遠くの方で大きな衝突音がした。私が何をしたの、と聞くと、

「あぁ。ひったくりって声が聞こえたから音を頼りに犯人に石ぶつけてやったんだよ。俺もこのくらいだったらまだできるんだけどなぁ」

 下萌えの頃の、穏やかな日のことだった。

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