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二百九十話 お題:愁傷 縛り:南京錠、自己紹介、懲らす、初星

 友人の力士の話である。彼は十両に昇進して初戦で初星をあげたのだが、それ以降は成績が振るわず悩んでいたという。

「潔く引退しようかとも思ったんだけど、お袋から勧められた強い心を手に入れるセミナーっていうのに通い始めたら全てが変わったんだ」

 セミナーの代表の男性は自己紹介で、

「このセミナーに通い続ければ、人よりも遥か高みに立つための強い心を必ず手に入れられます」

 と言った。彼は最初半信半疑だったが、セミナーの効果はすぐに現れた。

「特に効いたのが金属の箱の中に向かって自分の弱いところを叫んで、叫び終わったら蓋をして南京錠をかけるっていうワークなんだよ。それまでは強い相手とやる時はどうしてもビビっちまってたんだけど、気がついたらどんな相手とでも真っ向から相撲が取れるようになっててさ」

 セミナーのおかげで順調に白星を積み上げていった彼は、これで何もかも上手くいくと思っていたのだが、

「……相撲で勝てるようになった代わりに、俺の周りからどんどん人がいなくなっていくんだ。後輩を些細なことで懲らすようになったし、先輩に噛みつくことも増えた。この前なんかお袋を殴って骨折させちまったし、俺、怖くなってセミナーの代表に相談したんだけど」

 代表の男性は、強い心を手に入れるということはそういうことです、としか言わなかったという。

「……なぁ、お前は俺のことを見捨てないよな? 友達でいてくれるよな? もし俺のことを見捨てても、絶対に探し出してやるぞ。探し出して――俺、なんてこと言ってるんだ。こんなこと、こんなこと言うつもりじゃなかったのに」

 彼の狼狽ぶりは見ていて気の毒だったが、このまま友達づきあいを続けていると厄介なことになるだろう――さて、どうしたものだろうか。

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