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二百七十四話 お題:逓増 縛り:投じる、噛み分ける、光芒、厄介払い、防空壕

 祖母から聞いた話である。

「お前には黙ってたけど、お祖母ちゃん、実は人の魂が見えるんだよ」

 祖母はそう言って、空を見上げた。

「人が死ぬと、魂は光芒になって空を走るんだよ。今は落ち着いてるけど、戦争の時は本当にひどかった。日を追うごとに光芒の数が増えていって、しまいには空一面が光芒で埋め尽くされてねぇ。光芒の輝きがあんまりにも眩しくて、空を見たら目がつぶれるんじゃないかと思ったくらいさ」

 やっぱり戦争って怖いんだね、と私が言うと、

「そうだよ。戦争は怖い。何もかも壊れるし、人も数えきれないほど死ぬ。それに、人の心がどんどん鬼に近くなるんだよ」

 鬼に近くなるってどういうことなの、と私が聞くと、

「空襲の時に防空壕に入ってると、周りから声が聞こえてくるんだよ。病人を厄介払いできてよかった。年寄りを厄介払いできてよかった。嫌いなやつは焼け死んだだろうか。憎いやつは焼け死んだだろうか。他の誰が死んでもいいから自分だけは生きていたい――あの頃は、そこら中に鬼がいたんだよ」

 私が何も言えずに黙っていると、

「お前、色んなことを勉強しなきゃ駄目だよ。色んなことをやってみなきゃ駄目だよ。人間は簡単に死ぬんだから。酸いも甘いも嚙み分けるじゃないけど、色んなことを知ってればそれだけ生きやすくなるんだよ。自分から死地に身を投じるようなことは絶対にするんじゃないよ。自分の命も、人の命も大事にして生きるんだ。絶対に、鬼になるんじゃないよ」

 祖母はそう言って、私の頭を優しく撫でた。

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