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二十六話 お題:無責任 縛り:キャッシュ、流砂、炉開き、貴校、出迎える

 お世話になっている茶道の家元から聞いた話である。家元の弟子の一人に名門といわれる私立中学の理事長がいるらしいのだが、炉開きに招いた際ひどく気落ちした様子だったので何かあったのかと尋ねてみたところ、

「ある生徒さんのお母様が大変困った方だ、ということでした。いわゆるモンスターペアレントですか、ただ世間で言われているそういった方達よりもずいぶんとその、幼稚というか」

 その母親は何かにつけて自分の子供を特別扱いするように要求してくるとのことだった。それだけならば大して珍しくもないのだが言う内容があまりにも理不尽で、授業でうちの子供が不快な思いをしたから慰謝料をキャッシュで100万円払え、うちの子供が登校した時は校門の前で出迎えるように担任の教師に言え、などと常識を疑うようなことばかり言ってきたという。

「加えて私の言う通りにしていただけないのであれば貴校に災いが降りかかりますよ、なんて戯言を直接言ってきたそうで。ただその後本当に学校で悪いことが続いてしまったそうです」

 学校の生徒や職員に突然の病気や事故が多発し、怯えて転校する者や退職する者まで出始めるほどだったそうだ。

「そのお母様が関わっているという証拠もないし、どうしたらいいだろうとずいぶん悩んでいる様子でしたので、放っておくのが一番でしょうと答えました」

 偶然不幸が続いているのであれば自然と治まるだろうし、もしもその母親が何かよからぬことをしているのであれば悪事は自分に返るものであり、これもまた長続きしない。自分が動揺しないことこそが第一だと諭したところ、理事長はいくらか楽になった様子で帰っていったという。

「結局それから少ししてそのお母様は亡くなられたと聞いています。それと噂ですが、亡くなり方が普通ではなかったと」

 その母親は山奥にある流砂、いわゆる底なし沼に首まで埋まった状態で餓死していたそうだ。家元は今になって、理事長の相談に気安く答えすぎたのではないかと反省しているという。

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