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二百六十一話 お題:酷似 縛り:ひ弱い
子供の頃の話である。当時私は周囲からひ弱い、ひ弱いと馬鹿にされ、いじめられていた。このままいじめられ続けるのならいっそ死んでしまおうと、家の近所の橋に行ってみたがどうしても飛び降りることができず、自分には自殺をする勇気すらないのか、と情けなさで泣いていると、
「君、どうしたんだい」
声のした方を見るとたくましい青年が立っていた。気がつくと私は自分の置かれている状況を彼に話していた。彼は黙ってそれを聞いてくれた。私が話し終わると、彼は、
「君は僕に似ているよ」
と言った。私が馬鹿にしているのか、と言うと、
「いいや、違う。僕も昔は体が弱くていじめられていたんだ。僕はいじめたやつらに復讐するために体を鍛え上げた。そしていじめたやつらとその家族の骨という骨を片っ端からへし折ってやったんだ。どうしても折っている途中で死んでしまうんだけど、それでも苦痛が少しでも長引くよう、丁寧に折っていったよ。君は僕に似ている。きっと君は、僕と同じような人間になるよ」
今の私は、彼の言葉通りの人間である。