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二十五話 お題:啄木鳥 縛り:筆致、寸評、テリーヌ、活用、立地

 友人のレストランオーナーはいわゆる曰くつきの絵を持っている。木に留まった啄木鳥の絵で、対象の本質を余さず写し取ろうとするかのような繊細な筆致とまで寸評に書かれるだけあって素人が見ても見事な出来なのだが、どうやらあまりにも出来がよすぎたらしく、

「絵から木をつつく音がしたり、鳴き声がしたりするんだよね。しかも結構でかく。店が都心にあるからお客さんからどこに啄木鳥がいるの? って聞かれるとごまかすのが面倒でさ」

 とはいえ彼はその絵を気に入っており、何とか店に飾っておけないかと頭を捻ったところ、今度開店することになった2号店に絵を飾ることを思いついたのだという。

「まず立地が違うからね、軽井沢だし。店の奥の窓際にでも飾っておけば、まぁ外からの音だと思ってくれるでしょ」

 これで一安心と思っていたのだが、そうはいかなかった。いざ飾ってみるとクレームの数が一号店に飾っていた時の比ではなかったのである。

「軽井沢って啄木鳥の害がひどくて嫌われてるのを知らなくてさ。おかげでここはいつも啄木鳥がうるさくて不快だからなんとかしろ、みたいなお客さんが多くて」

 そして意外なことに二号店に絵を移動したことで、一号店の客から最近啄木鳥の音が聞けなくて寂しい、という声をよく聞くようになった。

「まぁどんなものでもお客さんに喜んでもらえるように活用すべきだからさ。結局絵は元の場所にずっと飾っておくことにしたよ」

 今一号店は都心にありながらどこからか啄木鳥がやってくるレストランとして雑誌にも取り上げられるようになったという。なんでも新作のテリーヌが好評らしいので、今度食べてこようと思っている。

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