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二十二話 お題:廃絶 縛り:往訪、周章狼狽、唯物論、思い描く

 大学の後輩にオカルト全般を徹底的に否定する男がいる。彼によると唯物論こそが正しく、実在を実証できない幽霊や超能力はそもそも存在しない、ということらしい。できることなら世のオカルト信者達を一掃したいと公言してはばからなかった彼だが、ある日を境にオカルトを否定することをぱったりとやめてしまった。何があったのかと聞くと、

「いや、その……本物の超能力者に会っちゃいまして」

 彼はどこか恥ずかしそうにそんなことを言った。なんでも以前から霊能者や超能力者という肩書きの人物のところに出向いては鼻で笑って帰る、ということを繰り返していたそうなのだが、彼の言う本物の超能力者を往訪した際はそれまでと明らかに違ったのだという。その人物は小奇麗な身なりをした中年の男性で、彼を見るなり、

「おぉ、見た目通りだなぁ、君全然信じてないんだね」

 と言ったそうだ。とはいえそのくらいでは彼は動揺せず、男性を挑発するように何かあなたの能力をテストできるものはないんですか、と言ったそうだ。男性は特に怒ることもなく、

「じゃあこんなのはどうだい」

 そう言っていわゆるESPカードと呼ばれるカードを出してきた。様々な図形が描かれたカードであり、それを彼に渡すと、どれか一つを心の中で思い描くように、と男性は言った。彼はカードに描かれた図形の一つを思い浮かべるふりをして、ESPカードに描かれていない図形を思い浮かべた。これでどうやったところで当てられない、そう思っていると、

「おいおい、カードの中から選んでくれって言っただろう、君ずいぶんへそ曲がりだなぁ、しかもなんだこの図形、見たことないぞ、星、じゃないなぁ、尖ってるところが七つか、何これ?」

 流石に彼も周章狼狽した。彼が思い浮かべたのは七芒星と呼ばれる星形多角形の一種で、そうそう目にすることはない図形だ。一体どんなトリックを使えば当てられるのかと彼が考えていると、

「へぇ、君珍しいなぁ、全然信じてないのに、いや信じてないからか、何かが思い知らせようとしてるのかもねぇ、普通ここまではっきりわかることってないよ」

 そう言って男性は紙に日時を秒単位まで書くと、彼に言った。

「場所は君の実家の台所ね。別に信じなくてもいいけど、どうにかできるの君だけだよ」

 時間になったら彼の実家の台所で何が起こるのか。男性は詳細を一切言わなかった。彼は男性がインチキであることを証明するためだと自分に言い聞かせて、わざわざ帰省し実家の台所で紙に書かれた時間になるのを待った。その時台所に彼以外は誰もおらず、確かに何か起きたとしても対応できるのは彼だけだった。そしてついに紙に書かれた時間になった。瞬間、ぼう、とテーブルの上に置いてあった新聞が燃え上がった。辺りに火の気など一切ない。彼はパニックになりかけながらなんとか消火に成功し、被害は新聞が焼け、テーブルが焦げ、台所が消火器の粉まみれになっただけで済んだ。

「目の前であんなことが起きたらいくら僕でも、ねぇ……家も燃えずに済んだわけですし」

 彼は今、世のオカルト否定派の人間達を一掃したい、と公言している。

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