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二百二十一話 お題:コマーシャルベース 縛り:両翼、伝導、塵肺、潜り抜ける

 私の祖父の話である。祖父はいつも自分の運のよさを自慢しており、私はよく祖父に捕まっては幸運のエピソードを繰り返し聞かされていた。

「俺は炭鉱で働いてて、そのせいで塵肺になっちまってな。その時は自分はなんて不幸なんだろうと思ったが、逆にこれがよかったんだ。塵肺のおかげで徴兵検査が乙種合格になって、危ないところにやられずに済んだ。戦争が終わってからも色んな厄介事を潜り抜ける羽目になったが、ある時いよいよ金がなくなって、もう駄目かと思ったことがあった。だがその時も、ちゃんと助けてもらえたんだよ。町で伝導のためにあちこちを旅して回ってるっていうやけに色黒な神父さんに会って、両翼に石みたいなのがついてる変な鳥をもらったんだ。まぁ鳥って言っても頭は馬みたいで、体には鱗があったから、鳥に似た別の動物なのかもしれないが。とにかく、神父さんからもらったその鳥のおかげで俺は命を繋ぐことができたんだ」

 その鳥はどういう風に役に立ったの、と私が聞くと、

「あぁ、その鳥はな、死体を見つけてくるんだ。しかも金目のものを持ったまま死んだ死体をな。利口なやつで死体から財布やら指輪やら時計やら、ある時なんか金歯を引っこ抜いて持ってきたこともあった。それで俺は鳥が集めたものを売って金を貯めて、それを元手に商売を始めた。商売が軌道に乗って規模を大きくしていって、やっと今の俺の工場になったわけさ。本当に俺は幸運だ。困った時は必ず助けてもらえるんだから」

 私は、死んだ人のものを売り飛ばして生き延びたことを自慢げに語る祖父が、嫌いだ。

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