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二百十三話 お題:有限 縛り:香油、程度問題、突き放す

 先日オイルマッサージを受けた際、セラピストの女性から聞いた話である。その日のマッサージで使用された香油が素晴らしくいい香りだったので、このオイルすごくいい香りですね、と言ったところ、

「そうでしょう。でも昔はこれよりずっといい香りだったらしいんですよ」

 と彼女は言った。どういうことですか、と私が聞くと、

「この香油は特別な香木の精油だけで作るものだったんですが、その香木の数が少なくなるにつれて製造元が香油の製造方針を巡って二つに分裂してしまったそうなんです」

 なんでも製造元のトップを中心としたグループは香油の生産量を減らすべきだと考え、もう一方のグループは香油を作る際他の精油も使うことで生産量を維持するべきだと考えたそうだ。私が、結局どちらのグループが勝ったんですか、と聞くと、

「それがどちらのグループでもないんですよ。製造元のトップが生産量を維持するべきだと主張するグループの人達を一方的に突き放すと、グループ間の対立は殺人が起きるまで激化したそうで、とても香油を作るどころではなくなってしまったらしいんです。最終的に香油の製造元はつぶれて香木も絶滅したとか。私が今日使った香油は複数の精油を組み合わせて元の香油を再現した安価なものなんですよ」

 私が、集団の中で意見をぶつけ合うのは程度問題ですがそれにしても最悪なケースですね、と言うと、

「確かにそうですね。でも元の香油がなくなったおかげで安価な代用品が広く出回ってくれた、と考えれば悪いことばかりでもないと思います」

 そう言って彼女は上品な笑みを浮かべた。

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