二百十話 お題:渡り合う 縛り:余燼、技術、無能
キャンプ仲間から聞いた話である。
「この間のキャンプがほんと最悪だったんだよ」
なんでもキャンプの最中に参加者の男性二人が喧嘩を始めてしまったのだという。
「二人とも自分の知識とか技術に自信を持ってるプライドの高いタイプだったんけど、まず装備のけなし合いから始まって、その後はお互いが何かする度に下手くそ! とかこの無能! とか言い合ってさ。それだけでも帰りたくなったのに」
その二人の喧嘩はとんでもないところまでエスカレートしたそうだ。
「バーベキューの後片付けの時に、喧嘩してる二人がバーベキューの炭の余燼をどれだけ口の中に入れられるかで決着をつけようとか言い出してさ。いくらなんでもまずいと思ったから止めようとしたんだけど」
止める間もなく、男性二人はまだ火がついている炭を同時に口の中に入れたという。
「一人は全然平気な顔して炭をガリガリ食べてて、もう一人は当たり前だけどのたうち回ってさ。急いで山を下りようとしたら、炭食べて平気な顔してたやつがそんなやつ放っておいてキャンプを楽しもうとか言ってきて……もう絶対あのグループとはキャンプに行かない」
彼と今度キャンプに行く際は、上等な酒でも持っていってやるかと私は思った。




