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二百四話 お題:ホスピタル 縛り:団欒

 看護師をしている母から聞いた話である。ある時母が珍しく難しい顔をしていたので、何かあったの、と聞くと、

「うーん、患者さんのことでちょっと気になることがあってね」

 と母は言った。容体のよくない患者さんなのか、と私が聞くと、

「いや、そういうことじゃないの。なんていうか、不気味なのよ。患者さんも、患者さんの家族も」

 なんでもその患者は高齢の女性で認知症の症状が出始めており、特に幻覚がひどいのだという。

「よく誰もいないところに話しかけてて、内容を聞いた限りでは家族の幻覚に話しかけてるんだけど、でもそれだと明らかにおかしいのよね」

 一体何がおかしいのか、と私が聞くと、

「幻覚と実際の家族に違いがありすぎるのよ。名前も家族構成も全部違ってて、いっそどっちかが丸ごと偽物なんじゃないかってくらい」

 私は認知症のせいで家族のことが上手く思い出せなくなっているのではないか、と言った。すると母は、

「確かに家族のことを思い出せなくなっちゃうことはあるけど、家族に関することを丸ごと間違えるっていうのはそうそうないのよ。それにその患者さんの家族はよくお見舞いに来るんだけど、来ても全然家族団欒って雰囲気じゃないからね。患者さんは私の家族を返せーっ! って叫ぶし、家族は家族で無駄に丁寧なお見舞いの言葉を淡々と言うだけだし、ほんとあの場には絶対いたくない」

 なおその患者は見舞いに来た家族が帰ると決まってあいつらに騙されなければ、あいつらに騙されなければ、と泣きながら繰り返し呟くそうだ。

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