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二百一話 お題:最悪 縛り:炭肺、暗雲、小刀

 女友達の話である。彼女は最近まで、幽霊に眠りを妨げられる日々を送っていたのだという。

「寝てるとヒューッ、ヒューッ、っていう音で目が覚めるの。音のする方を見るとガリガリに痩せたお爺さんがいてね。私が悲鳴を上げたり体を起こしたりすると消えるんだけど、毎晩出てくるからもう眠るのが怖くなっちゃって」

 満足に眠れないため、彼女は段々と日常生活を送ることが困難になっていった。困り果てた彼女が家族に相談したところ、

「お祖母ちゃんが、その幽霊はもしかしたらお前の曾お祖父ちゃんかもしれないって」

 なんでも彼女の曾祖父は生前炭鉱で働いており、炭肺を患って亡くなったとのことだった。

「言われてみると確かにヒューッ、ヒューッ、って音は肺が悪い人の息の音っぽかったんだよね。でも幽霊の正体が曾お祖父ちゃんならどうして私のことを苦しめるんだろうって、そこが気になったの」

 祖母は、とりあえずお守りの代わりに持っておけ、と彼女に先祖伝来の小刀をくれたという。彼女は寝る時にそれを枕元に置いて寝ることにしたのだが、

「それでもやっぱり幽霊は出てきたの。でも、普段とはちょっと様子が違ってて」

 その幽霊は小さく掠れた声で何か言っているようだった。ヒューッ、ヒューッ、という音も邪魔して非常に聞き取り辛かったものの、彼女はなんとかそれを聞き取った。

「ごめん、もう守れない、もうあいつから守ってやれない、って言ってたの。それ聞いて曾お祖父ちゃん私に危険を知らせるために出てきてくれたのかぁ、って納得したんだけど、同時にあいつって何? ってなって」

 それ以来曾祖父らしき幽霊は現れなくなったそうだが、それでも彼女は最悪な気分のままだという。

「私のことを守ってくれてた曾お祖父ちゃんが出てきただけであんなに怖かったのに、次は私にとって確実に害がある何かが来る訳でしょう。ほんと、どうしよう……」

 彼女の人生に立ち込めた暗雲が晴れるのは、どうやらまだまだ先のことのようだ。

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