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二百話 お題:丸薬 縛り:一荒れ、等身、擦り合い、書信

 男友達から聞いた話である。なんでも彼の家には代々伝わる秘伝の丸薬があるのだという。

「親父がその丸薬を飲むのを初めて見たのは、親父のお気に入りだった等身の石膏像に姉貴と一緒に悪戯して、壊しちまった時なんだけどさ」

 彼と彼の姉は父親から誰が石膏像を壊したか知らないかと聞かれ、思わずその場で責任の擦り合いを始めてしまった。

「そしたら親父の顔色がみるみる真っ赤になっていってさ。こりゃあ一荒れするどころじゃねぇなと思ってたら」

 父親は懐から高価そうなピルケースを取り出すと、その中から真っ黒な丸薬を一粒出して見せつけるように飲んだのだという。

「親父は、家長たるもの常に冷静でいなければならない、この丸薬はそれを助けてくれるものだって言ってたけど、丸薬飲んだ親父は明らかに冷静を通り越して感情が麻痺してたんだよなぁ」

 効果としてはそれほど違いはないのではないか、と私が言うと、

「大違いだよ。丸薬飲んで感情が麻痺したせいで、親父は姉貴を死なせたんだからな」

 彼の姉は生まれつき糖尿病を患っており、ある時意識を失うほどの重い低血糖の発作を起こしたのだそうだ。

「親父が意識を失った姉貴を最初に見つけて、まぁパニックに陥るのを防ぐためだったんだろうな、丸薬を一粒飲んだんだってよ。そしたら親父が何したと思う? 応急処置どころか救急車すら呼ばないでコーヒー飲んでやがったんだよ!」

 彼が救急車を呼んだ時には、姉の体は冷たくなっていたという。

「親父、丸薬を飲んだら姉貴が生きようが死のうがどうでもよくなったらしくてよ。それで一人のんびりコーヒー飲んでたんだって……ふざけんなよ」

 彼は父親への復讐の意味も込めて、わざわざ書信で、俺はお前が死にそうになったら絶対にあの丸薬を飲むからなと伝えたそうだ。なお父親はそれを読んで号泣したそうである。 

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