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百九十八話 お題:檻 縛り:なし

 通院していた病院で知り合った女性の話である。

「私ね、子供の頃ペットが飼いたかったんだけど、親がどうしても許してくれなかったの。だから当てつけに子犬用の檻だけ買ってそれを自分の部屋に置いてね、中に何か生き物がいるっていう設定で遊んでたの」

 辛いことや悲しいことがあると、彼女は檻の中の空想の生き物に愚痴を言うことでストレスを発散していたという。

「親とか友達と上手くいかなくても、自分には檻の中の生き物がいるからいいやってずっと強がってたんだけど、ある時いつまでも自分の空想に甘えてるから周りと上手くいかないんだってことに気づいたの」

 彼女は檻の扉を開けると、決別の意味を込めて檻の中の生き物に、今までありがとう、さようならと声をかけた。

「――こんな長い間閉じ込めておいて、まさかただで済むとは思ってないよな?」

 檻の中から声がした直後、彼女の部屋の本棚が倒れ、彼女は頭を強打したという。

「目が覚めたら私、体の感覚がおかしくなっててね。物を触っても触ってるってわからないし、熱いとか冷たいとか痛いとか、そういうこともわからなくなってたの。触って実際にそれがあるって確かめられないから、まるで私一人檻の中に閉じこめられて、世界から切り離されてるみたいに感じるの」

 彼女は、それでも私に握手を求めてきた。私は彼女の手を握った。彼女は寂しげに微笑むと、

「ありがとう」

 と私に言った。

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