表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
196/302

百九十五話 お題:インフルエンザ 縛り:須弥山、公私、類似、矮小、切り紙

 友人の家族がやけに仏様の類を嫌っているので、友人に何かあったのかと聞いてみた時のことである。

「あー、その、私が子供の頃に家族皆が仏様にからかわれたというか、騙されたというか……」

 彼女はそう言って話し始めた。なんでも彼女は子供の頃に重病にかかって死にかけたのだという。

「インフルエンザと類似した症状が出るのにインフルエンザじゃない謎の病気でね。お医者さんからも打つ手がないって言われちゃったくらいで、もうほんと大変だったよ」

 病気にかかっている彼女も当然大変だったのだが、それ以上に彼女の家族の様子は悲惨の一言だったそうだ。

「お母さんは入院した方がいいって言われるくらい痩せちゃうし、お父さんはすごく仕事熱心だったのが全く仕事が手につかなくなっちゃって、公私のけじめをつけろって怒られても全然直らなかったからクビ寸前まで行ったみたいだし、お祖父ちゃんは私が治るよう願掛けして毎朝水浴びしてたらしいし、お祖母ちゃんは歩くの大変なのに近所の神社でお百度参りやったらしいし、ほんと話聞いてると申し訳なくなるというか……」

 そんな中、彼女の祖母が見た夢に仏様が出てきてお告げをしていったのだという。お告げによれば切り紙で大きな須弥山の図を作れば彼女の病気は治るとのことで、彼女の家族は一丸となってひたすらに紙を切り、ついに高さ、幅共に3mを超える巨大な須弥山の図を完成させたのだが、

「完成したその日の夜にお祖母ちゃんの夢にまた仏様が出てきて、本当は須弥山の図なんて作らなくても病気は治るのにまんまと騙されるとは、つくづく人間とは矮小で愚かで滑稽な生き物だ、って言って消えちゃったとか……うん、それからだね。うちの家族が仏様を目の敵にするようになったの」

 私が、君のお祖母さんの夢に出てきた仏様は恐らく偽物ではないか、と言うと、

「私もそう思うんだけど、なんかもう本物だろうと偽物だろうと仏様っぽいものは全て一家の敵だ! みたいな感じなんだよね、うちの家……多分もうどうしようもないと思う」

 仏様もとんだとばっちりだな、と私は彼女の話を聞いて思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ