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百九十話 お題:爆竹 縛り:任意、一画、取り返す、トリウム

 大学のサークルの飲み会で男友達と話していたところ、恐ろしい体験をしたことはあるかという話になり、その際に聞いた話である。

「子供の頃ってさ。ちょっとした悪戯のつもりでとんでもないことしちまってるってあるよな。知識がないから仕方ないとはいえさ」

 なんでも彼は小学生の頃、よく家の近所の廃工場の一画で友達と遊んでいたそうなのだが、ある日いつものようにそこで遊んでいると、作業着姿の男性からちょっといいかい、と声をかけられたという。

「最初怒られると思って逃げようとしたんだけど、その人、僕の作った爆竹を買わないかって俺達に言ってきてさ。それで足が止まったんだよ」

 その男性曰く、

「これは僕がある会社の極秘技術を使って作った特別な爆竹なんだ。普通のものよりもずっと大きな音が鳴る。ただ最悪の場合君達からこれを取り返すために怖い大人達がやって来るかもしれない。これを買うかどうかはもちろん任意だ。どうする?」

 とのことだった。彼と彼の友達は悩んだものの、極秘技術や特別といった言葉にすっかり惹かれていたこともあり、お金を出し合って一本五十円のその爆竹を二十本買ったという。

「使ってみるとその爆竹確かにすごい音がしてさ。これはいいやってことで学校とか幼稚園とか病院とか、色んな場所で鳴らしていったんだ」

 彼と彼の友達は爆竹を一本一本大事に使っていたが、それでも全て使い切るまで二週間もかからなかった。

「俺も友達も、爆竹を売ってくれた男の人がまた廃工場に来ないかなぁって思ってたんだ。そしたらテレビでその男の人が逮捕されたってニュースが流れてさ」

 男性は家で爆竹だけでなく、爆弾も製造していたのだという。そして男性が作った爆竹や爆弾は爆発するとトリウムが辺りに飛び散るようになっていた。

「ニュースを見た当時はトリウムって珍しい薬品か何かかなって思ってたけど、今はもう放射性物質の一つだってわかってるし、爆竹を鳴らした時に俺や友達、周りにいた人達が被爆したこともわかっちまってる。だから、そのことがすごく怖いんだ。知らなかったとはいえ、もしかしたら自分の行いが大勢の人の人生をねじ曲げちまったかもしれないと思うと」

 なお彼と彼の友達には今のところ被爆の影響は見られないという。

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