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百八十五話 お題:観賞 縛り:立像、品、仲間割れ、赤鉄鉱

 男友達の話である。彼は彫像の収集が趣味で、以前から欲しかった彫刻家の作品がやっと手に入ったというので見に行ったところ、

「せっかく来てくれたのにすまない……実は、今こんな状態なんだ」

 そう言って彼が見せてくれたのは無残に破壊された五体の立像と比較的傷の少ない一体の立像だった。

「この六体の立像は元々一揃いで同じ場所に飾られるはずだったのがバラバラに売りに出されたものなんだ。苦労してやっと全て揃えたと思ったのに、一体何がどうなってるのか……」

 私はとりあえずその場で六体の立像を鑑賞してみることにした。一体だけ原型を留めている立像の品のある佇まいからして、破壊されてしまった五体の立像もきっと見事な出来栄えだったのだろうと残念に思っていると、ふと頭に妙な考えが浮かんだ。私が彼に、この状況はまるで立像達が仲間割れをして一体だけが生き残ったみたいだな、と言うと、

「馬鹿なことを言わないでくれ、と言いたいところだが、形が残ってる立像が左右の手に握ってるもの、なんだと思う?」

 立像の左右の手を確認したところ、それぞれの手の中に金属の玉が六つずつ握られていた。私が彼に、これは一体なんだい、と聞くと、

「目だよ。立像の目だ。これらの立像には目の部分に赤鉄鉱を研磨した玉がはめこんであったんだ。それとその形が残ってる立像、手に入れた時はそんな笑った顔じゃなかったんだ。君がさっきまるで立像達が仲間割れをしたみたいだって言ったが、それを聞いて僕はぞっとしたんだよ。ありえないことだが、もし君の言ったことが正しいのだとすれば、そこの一体だけ残った立像は他の立像達を破壊して目をえぐり出し、更に自分の目までえぐり出して笑っていることになるんだから」

 私が、実際にそれが起きているところを見られたならどんな素晴らしいショーを観賞するよりも素敵な体験になっただろうなと言ったところ、彼はまるで害虫を見るような目で私を見た。

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