百七十九話 お題:必読 縛り:予習、内勤、通り相場、ステレオタイプ
知人の男性の話である。彼は職場の人事異動で外勤から内勤に変わったことでストレスが激増したため、転職することを決意したという。
「友達に相談したら、外歩き回らなくてよくなったんだからよかったじゃんとか言われてさ。外回りより会社の中で仕事してるやつの方が楽っていうのほんとただのステレオタイプだから」
転職するにあたり何か資格があった方がいいかと思い、彼は職場の先輩に相談した。すると、
「ここいいぞって言われてビラ渡されてさ。内容読んでみたらなんか色んな資格の参考書? の通信販売らしくて。それが滅茶苦茶たけぇの。普通参考書なんて高くても3000円くらいが通り相場じゃん。そこのやつどれも何万もすんの。あー、これ絶対だまされるやつだと思ったんだけど」
先輩は彼に、働きながら資格を取るための予習復習をするのは大変だから、金があるならここで済ませた方がいい、と強くすすめたという。
「まぁその先輩には仕事で何度も助けてもらったし、信用できる人だったからさ。とりあえずその通信販売でそこそこ役に立ちそうな資格の参考書を買ったんだよ。そしたら」
送られてきたのは資格試験のための参考書ではなく、資格試験の解答が全て書かれた紙だったという。
「その紙見てやっぱりだまされたかぁって思ったんだけど、どうせ金返せって言っても戻ってこないだろうし、ネタにするつもりで紙に書かれた解答丸暗記する以外何も勉強しないで資格の試験受けに行ったんだよ」
彼はあっさりとその試験に合格したそうだ。彼は今先輩から教えてもらった通信販売で司法試験の解答を買うために金を貯めているという。