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百七十五話 お題:立ち聞き 縛り:客あしらい、ペンス、大自然、賛否

 先日体験した話である。その時私は友人達と一緒にキャンプ場に来ていた。そのキャンプ場は設備はろくに整っておらず、また管理人も客あしらいのよくない不愛想な男性なのだが、とにかく安く、また周囲の自然が豊かなこともあってキャンプ好きの間では賛否あるものの決して不人気という訳ではなかった。私と友人達は久しぶりに大自然を満喫し、すっかり浮かれていたのだが、

「てめぇ、さっきから何訳わかんねぇこと言ってんだ! いい加減にしろ!」

 キャンプ場の管理人の怒声で、一気に冷静になった。様子をうかがったところ管理人と利用客の男性が何やら揉めているらしかった。男性は管理人に何かを見せながら、

「この花はキャンプ場の周りに生えてますか?」

 と繰り返し尋ねていた。私はちょうど野鳥を観察するための双眼鏡を提げていたため、それで男性の手元を見たところ、男性が管理人に見せていたのはイギリスの20ペンス硬貨だった。20ペンス硬貨には薔薇が刻印されているので、どうやら男性はこのキャンプ場の周りに薔薇が自生しているかどうか知りたいようだった。とはいえ明らかに尋ねる相手が悪く、男性は管理人に、

「薔薇がこんなところに生えてるわけねぇだろ! 薔薇が欲しいんなら花屋行け花屋!」

 と冷たくあしらわれていた。男性はしばらくの間粘っていたが、結局、

「わかりました」

 と言ってどこかへ行ってしまった。管理人は悪態をつきながら、その場を離れようとしたのだが、

「こんなに咲いてるじゃないかぁ、あなた嘘つきだぁ、こんなに咲いてるじゃないかぁ」

 すさまじい勢いで戻ってきた男性によって地面に引き倒され、男性がズボンのポケットに大量に入れていた薔薇の花と茎を口の中につっこまれ、更に頭と顎を掴まれて口の中のものを無理矢理咀嚼させられた。流石に見ていられなくなった私達は大声を上げて管理人と男性のところへ駆け寄った。男性は逃走し、管理人は口の中に無数の傷を負ったものの命に別状はなかった。なお、逃走した男性はまだ見つかっていない。

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