表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
170/302

百六十九話 お題:流離 縛り:生きる、混乱、下ろし和え、フラミンゴ、悪党

 女友達から恋人が失踪したと聞かされた時のことである。

「なんか魚っぽい男だったんだよね。顔つきとか体臭とか。あと指の間にすっごい水かきあったし」

 その男性は記憶が混乱しており、彼女は最初に会った時、こんな状態でちゃんと生きることができるのかと思ったそうだ。

「でも私世話焼きだからさぁ。かえってそこがよかったんだよね」

 彼女はすぐに男性と同棲を始めた。彼女と暮らすうちに男性は少しずつ落ち着きを取り戻し、やがて働くことができるまでになった。

「とにかく下ろし和えが大好きでさぁ。仕事から帰ってきて夕食に下ろし和えがないってわかるとすっごい不機嫌になるの。あとは動物がすっごい好きで、時間がある時は動物番組見たり動物園行ったり、あ、動物園でたまたまフラミンゴがキスしてて、何枚も写真撮ってたなぁ」

 二人の生活は軌道に乗り、彼女も妊娠していることがわかったのだが、男性はある日突然家に帰ると言って行方をくらましてしまった。

「ここ以外のどこに家があるんだよって聞いたら、海って即答されてさ。もう完全に魚の答えじゃん。それでなんか気が抜けちゃって、こうなったら一人で子供育てようと思ってさ」

 私はその男性のことを結構な悪党だと思ったのだが、それを彼女に伝えると彼女は複雑そうな顔をした。その後彼女は出産したが、産まれてきた子供は人と魚が混ざったような奇怪な見た目をしており、呼吸をすることができずすぐに死んだという。

「あーあ、子供も死んじゃったし、私も海に帰ろうかな」

 彼女は最近、これが口癖になっている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ