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百六十一話 お題:言い表す 縛り:ジョギング、音感、務まる、トラベラーズチェック

 知人の男性の話である。彼は仕事ばかりの生活にうんざりし、何か趣味を持ちたいと思っていたところ、偶然新聞に住んでいる市の市民合唱団のことが書いてあったため、思い切って参加してみることにしたという。

「学生の頃は徹夜でカラオケとかよくやってたけど、今はすっかり歌わなくなったからね。自分に務まるかどうか不安だったよ」

 だがいざ参加してみると合唱団の団員は皆優しく、男性が足りないということもあって彼は大いに歓迎されたそうだ。初心者にしては音感が非常にいいと他の団員からほめられ、すっかり舞い上がった彼は自主練も熱心に行い、体力と肺活量を向上させるためにジョギングまで始めた。

「やってみるとジョギングも楽しくてね。やればやるほど体が健康になっていくのがわかるし。ただこの間さぁ」

 ジョギング中、彼は側を歩いていた男性にぶつかってしまったという。男性は何かを落とし、彼が咄嗟に謝りながら落ちたそれを拾いあげると、

「トラベラーズチェックだったんだよ。それも見たことないデザインの。というかトラベラーズチェックってもう売ってないはずだし、なんでこんなもの持ってるんだろうと思って」

 彼が男性の方を見ると、一箇所明らかにおかしなところがあった。

「頭が逆についてるんだよ。本来顔がある方に後頭部が来てて、前が見えるはずないのに普通に俺が持ってるトラベラーズチェック取ってさ。それで歩き出そうとしたからやばい、このままだと顔見ちまうと思って目をそらして、すぐにそいつと逆方向に走り出したんだ。あの時の恐怖はとても言葉じゃ言い表せないね」

 そんな体験をしたにもかかわらず、彼はまだジョギングを続けているという。

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