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百六十話 お題:寒気 縛り:夜想曲、失敗、破傷風
姉から聞いた話である。姉はピアノの才能があり、外国に留学してピアノを勉強していたのだが、
「指導してくれた先生がすごく気持ちの悪い先生でね。私の家には悪魔に教えてもらった夜想曲が代々伝わっているんだ、とか言ってくるの」
その夜想曲というのは弾けば手を壊してしまいかねない難曲で、失敗せずに弾ければ弾いた人間が死んでほしいと望む人間が死に、失敗すれば弾いた本人が死ぬのだという。
「この夜想曲はありとあらゆる方法で人を殺す、人の手や事故、癌や破傷風などの病気で死ぬこともある、だったかなぁ。その先生、自分が悪魔の夜想曲を弾けたから嫌いな人が死んでくれたって本気で思い込んでるみたいだったから、一応話に相槌は打ってたけど、その間ずっと寒気がしてたよ」
なおそのピアノの先生だが、自宅でピアノを弾いている時に亡くなったという。弾いていたピアノの譜面台には異様に古い楽譜が置いてあり、楽譜に書かれていたのはクラシックのどの曲でもない、難解で精緻な曲だったそうだ。