表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
154/302

百五十三話 お題:酒 縛り:寸前、主情、塩辛声

 友人の話である。彼は殺人罪で逮捕され、現在服役中なのだが、私は彼が人を殺したとはどうしても思えなかった。そのため私は刑務所に面会に行き、本当にお前がやったのかと彼に聞いてみた。すると、

「……信じてもらえないだろうが、事件の時、俺は体を乗っ取られてたんだよ」

 そう言って彼は詳しい話を始めた。事件の寸前、彼は一人バーで酒を飲んでいたという。元々彼は酒の飲みすぎで声が塩辛声になってしまったほどの酒好きで、また普段は理性的な性格が酒が入るとひどく主情的な性格になり、近くにいる人に絡んでは悩みを聞き出して泣きながら励ましたり叱ったりするという悪癖があった。その時も彼は酔っ払っており、近くの席に座っていた女性に、

「あなたの悩みを聞かせてください! あなたの苦しみを俺とあなたとでわかち合いましょう!」

 と大声で話しかけ、近づいていったという。女性は彼の方へ顔を向けると、

「助けていただけますか?」

 と彼に言った。彼は、

「俺にできることならなんでも!」

 と女性に言った。すると女性は、

「ではあなたの体を貸していただけますか? 殺したい人がいるので」

 と彼に言ったそうだ。彼は女性が言ったことをろくに聞きもせず、もちろん喜んで! と返事をしてしまった。殺したい人がいるので、の箇所を聞いたのは返事をした後だったという。

「で、気がついたら俺は全く知らない人を刺し殺してたんだよ」

 私は彼に対して何か言おうとしたが、言葉に詰まってしまい、やっと出てきたのが、

「まだ酒は飲みたいか?」

 というしょうもない質問だった。彼はその質問に一切躊躇することなく、

「飲みたい」

 と答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ