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百五十一話 お題:官公署 縛り:一本槍、準える
私の父の話である。父は非常に暴力的な人で、母が嵐に準えるほどだった。とにかく少しでも気にいらないことがあると誰彼構わず暴力を振るい、警察の世話になったことも一度や二度ではなかった。にも関わらず父はなんでも暴力で押し通そうとすることをやめず、正直一本槍なのも大概にしてほしいと思っていたのだが、ある時父は妙に神妙な顔をして私と母に、
「俺の今までのやり方は間違っていた。これからはもっと頭を使おうと思う」
と言った。一体何があったのだろうと私と母は二人して不気味に思っていたのだが、それからすぐに父は失踪してしまった。父が失踪してしばらく経った頃、突然警察が家にやってきて父の部屋を調べていった。なんでもこのところ多発している役所や交番、消防署といった施設を狙った爆弾事件の犯人が父らしいということだった。犯人はわざわざ犯行声明も出しており、国の機関で働くやつらの居丈高な態度が直るまで爆破を続けるとのことだった。もし事件の犯人が父ならば、どうしてよりひどい暴力を振るうために頭を使ったのかと、そう思わずにはいられない。