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百四十三話 お題:むずかる 縛り:漏れ聞く、吹き寄せ、低周波、ナショナルミニマム、瓜

 知り合いの女性の話である。彼女の実家にはよくわからない男性がずっと居候しているのだという。

「私は昔からあんちゃんって呼んでるんだけど、とにかくうちとの関係性が全くわからないのよ。多分家族とか親戚ではないし、両親との関係もはっきりしないし。もしかしたらお祖父ちゃんお祖母ちゃんと何かあったのかもしれないけど、それだってわからないしね」

 その男性は彼女が物心ついた時には既に実家におり、一緒に遊んでもらった記憶もあるという。顔が瓜のように長いこと以外は取り立てて外見に特徴はなく、漏れ聞くところによるとかなりのインテリなのだそうだ。

「確かに時々ナショナルミニマムだのソーシャルプロテクションだの訳のわからないこと言うから頭いいんだろうなぁとは思ってたけどね。でもあんちゃんにはもっとすごい特技があるのよ」

 なんでも男性は、鳩の吹き寄せができるのだそうだ。

「これから鳩をたくさん呼んでみせるよって言って、口をすぼめたまましばらく立ってると鳩が何十匹も寄ってきてね。後は私が実家に子供連れてきた時に子供がむずかると、子供の近くで口をすぼめるのよ。そうすると途端に子供がご機嫌になるの。多分人間には聞こえない低周波とかそういうのを出してるんだろうね」

 素性のわからない人が実家にいて不安はないのか、と私が聞くと、

「まぁそこはちょっとモヤっとするけどね。でもずいぶん長いこと一緒に暮らしちゃったし、変な形ではあるけど、これも一つの縁じゃないかな」

 本人がそう言うのならこれ以上はお節介になるなと思い、私は何も言わなかった。

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