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百二十四話 お題:驚嘆 縛り:がめつい、年商、千編一律、下塗り

 あるアパレルショップの店長に取材をした時の話である。その店は一店舗としては破格の年商であり、秘訣はなんなのかということで取材に行ったのだが、店に入ってみるとおかしなところがあった。

「すいません、こちらのお店のスタッフさんは皆さんご兄弟なんでしょうか?」

 私は思わず店長にそう聞いてしまった。そう聞かざるをえないほど、その店のスタッフ達は顔から体格から雰囲気から服装まで何もかもそっくりだったからだ。店長は私の質問に、

「いいえ、違いますよぉ」

 と答えた。店長は女性で、じゃらじゃらと着飾ったいかにもがめついという見た目をしていた。最初に見た時から印象はあまりよくなかったのだが、無駄に甘ったるい話し方が更に勘にさわった。

「私のお店は置いてある商品やお店の内装ももちろんこだわってますけどぉ、一番こだわってるのはやっぱりスタッフの質なんですよぉ、どうやってスタッフの質を維持してると思いますぅ?」

 店長がこちらに話しかけるたびにしなを作るのに辟易しながら、私は、

「何か特別な教育をされているんですか?」

 と尋ねた。私の質問に対して店長は、

「ぶっぶー、残念ながら外れですねぇ。正解はぁ、お店の外側の壁にあるんですよぉ。外側の壁を下塗りする時に特別なおまじないのための絵をたっくさん描いてもらってぇ、それを上からまた塗料を塗って隠してあるんですけどぉ、そのおまじないっていうのがお店に長くいる人を段々と変えていくっていうやつなんですよぉ。それを使ってスタッフの見た目とか性格とか仕事の仕方とかを全部統一したんですよぉ。正直ちょっと悪いことしたかなーとも思いますけどぉ、でも犯罪じゃないからまっいいかーって感じですねぇ」

 正直何を言っているのかわからなかったが、とりあえずそれらしい質問をしておこうと、

「同じようなタイプのスタッフを揃えれば確かに管理はしやすくなると思いますが、接客などが千編一律になってしまわないんですか?」

 と聞くと、

「私のお店のお客さんはいつ来ても同じような接客をしてもらえるから安心だって言ってくれてるのでぇ、それが気にいらないんだったら他のお店に行ってもらうしかないですねぇ」

 と店長は言った。店長のことは気にいらないが、どうやら店の経営方針は間違っていないらしく、今も店の年商は増え続けているという。ただスタッフが皆あまりにも似すぎていて気味が悪い、という声も徐々に増えているそうなので、どうかその悪評が増え続けてくれますように、と私はひそかに祈っている。

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