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百六話 お題:鉄砲水 縛り:図書、話芸

 友人の女性の話である。彼女は図書館の司書をしているのだが、ある日いつものように図書の整理や来館者の対応といった仕事をこなしていると、館内のイベントスペースから穏やかな、それでいてよく通る女性の声が聞こえてきた。話している内容からすると子供達に絵本の読み聞かせをしているようで、声が素晴らしいだけではなく、話し方も話芸を習っているのではないかと思うほど洗練されたものだった。少しの間彼女はその女性の声に聞き入っていたのだが、はっと気づいた。

「うちの図書館のイベントスペース、予約制なのよね。その日絵本の読み聞かせの予約は入ってなかったから、予約が必要なことを知らないで使ってるのかなぁって思って、とりあえず中に入ろうとしたら」

 はい、今日集まってくれた皆は全員鉄砲水に飲みこまれて死にます、かわいそうねぇ、本当にかわいそう――イベントスペースの中からそんな声が聞こえてきたという。

「いきなりなんてことを言うんだって思って中に入ったら、いたのは子供達だけでね。絵本読んでた女の人はどうしたのって聞いたら、消えちゃったって言われて。おまけにイベントスペースに集まってた子達みんな親御さんに黙って一人で来てたみたいで、結構な騒ぎになっちゃって大変だったのよ」

 それからしばらくして、彼女の勤める図書館がある町は川遊びの際鉄砲水によって溺死する子供が多発したことで全国的に有名になったのだが、彼女は子供が溺死する事故が多発したのは飽くまでも不幸な偶然だと言い張っている。

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