百二話 お題:蓋開け 縛り:直営、町長、打点、魔境
知人がとんでもないことをしてしまったかもしれない、と言ってきたので話を聞いてみることにした。彼はとある町の町長をやっており、町興しのためにその町出身のプロ野球選手に協力してもらったのだが上手くいかなかった。と言っても企画自体に問題があったわけではない。彼が協力を頼んだ選手の打点はリーグで1、2を争うほどであり、ファンからの人気も高い。しかもその選手の呼びかけでなんと町に球団直営のグッズショップがオープンするなど、むしろ順調に進んでいたと言っていい。だが、
「駄目だったんだよ。町の活性化には全然繋がらなかった。周りからはどれだけの金を無駄にしたんだって一方的に非難されたし……」
成果を求めて焦りすぎているのであって、結果はこれから出るのではないか、と私が慰めると、
「……もう遅いんだ。頼んでしまったんだ」
何を頼んだのか、と私が聞くと、
「拝み屋だよ。国会議員も頼りにしてるっていう凄腕の拝み屋に町興しの成功を頼んだんだ。とは言っても別に自分から頼んだわけじゃない。お世話になってる病院の先生に相談したら、是非拝んでもらいなさいって言われて、先生の顔を立てる上でも頼まなくちゃいけなかったんだ。拝み屋からは町興しは成功させられるが、ある時を境に町は魔境になると言われた。もちろん信じなかったさ。でも成功してしまったんだ。今町は嘘みたいに賑わってる。信じられないくらいだ。でも、拝み屋が言った通り町興しが成功したのなら、つまりは町が魔境になるのも本当ってことだろう?」
拝み屋が言った町が魔境になる時まで、あと三年ほどだという。