百一話 お題:ダンクショット 縛り:破邪、摘まみ洗い
弟のバスケの試合を応援しに行った時のことである。弟は非常に神経質で、お気に入りの服の汚れたところをいつまでも摘まみ洗いしているようなやつなのだが、バスケの試合になると打って変わって激しいプレイを行い、ダンクショットを決めることも珍しいことではなかった。その日の試合でも弟は活躍しており、私が座っている席の周りから弟のことをほめる声がチラホラと聞こえてきたのだが、その中に妙なものが交ざっていた。
「あの子すごいねー、自分では気づいてないだろうけど才能あるよ。悪いものがバンバン弾け飛んでる。まぁ歩くだけで祓う方法もあるし、ダンクの方が見た目はわかりやすいよね。差し詰め破邪のダンクってところかな。どうする? 今度スカウトしてみる?」
声のした方を見てみると、そこには普通の外見の女性がいた。女性は隣の男性に話しかけていたようで、そちらも外見にこれといった特徴はなかった。二人はしばらくの間試合を眺めていたが、突然立ち上がり、私の方に来て、
「「後ほどご挨拶に伺いますから、よろしくお願いしますね、お兄さん」」
そう私に言って立ち去った。試合の方は弟のチームの勝利で終わったが、私はと言えば二人の言ったご挨拶という言葉の意味が気になって気になって、とても喜ぶどころではなかった。