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誰かの視線
「ここは……」
意識が戻るとその空間は光が溢れていた。身体中の傷が癒されているのが解る。
唐突に目が覚めるように、ここがどこかを理解した。馴染み深いとまではいかないが、知っている場所だ。そしてなぜこの状況になっているのかも、直前の記憶から推測出来た。
「……そうか、これは――。そこに、空間の向こうにいるのか。力を貸してくれた礼に、何か出来ることはあるか? ――」
空間の向こうからの答えを受け取って、立ち上がり動き出す。
岩山、荒れ地、草原。次々に視界の風景が変わる。最終的に辿り着いたここは賢者の館だ。
「久しいな。……大きくなった」
賢者リセルは、相変わらずの無表情に僅かな感慨を滲ませて広間で出迎えた。
「この歳になって、そう言われるのは複雑だが……あなたになら無理もないか」
再会の懐かしさと同時に、賢者リセルの言いように、未だに子供扱いされているような感覚を覚えて、自然と苦笑じみた声音になった。
「用件は何だ?」
「これを――」
問われて手に持った物を差し出すと、手のひらの中で小さく金属音がした。
「……そうか」
賢者リセルはそれを受け取ると、納得したようにつぶやいた。
「それと、一つ頼みがある」
「――」
その頼みを聞いた賢者リセルは、微かにうなずくと、黙ったまま踵を返した。




