第一パーティ 一
転移陣に飛び込むと、光と共に、入った時と似たような部屋に出た。一瞬転移に失敗したのかとも思ったが、窓から見える景色からして、先程よりも上の階だ。こちら側の床には陣がなく、やはり一方通行らしい。
顔を上げて辺りを見渡したが、先に陣に入った筈の、フィアレスの姿は見当たらなかった。フィアレスが踏み込んでから、私が飛び込むまでに十秒も間はあいていない筈だから、流石に待たずに先に行ってしまったのではなく、予想していた通り、転移先がバラけてしまったのだろう。ちなみに転移先ポイントに誰かいると、普通は転移出来ないように設定されている筈だ。
「さて……どうなるかな」
私は少し胸の高鳴りを感じつつ、床の一段高くなっている転移先ポイントからおりて、自分が出て来た場所を見つめながら待っていると、やがて誰か飛んで来た。見慣れたその姿に、気さくに声をかける。
「や、レック」
「あんただけか?」
「今の所。――やっぱランダムか」
そう私が確認を取るとレックも同意した。
「だろ」
「他に誰か来るかな」
「多分」
レックがひょいと段差から飛びおりると、再び誰かが飛んで来た。その小さな人影、レイナは不思議そうな表情を見せて私とレックに訊いた。
「……二人だけ?」
「うん、多分他の人は別の場所に飛んだと思う。あれ、転移先が一つじゃなかったんだ」
「変わった術法陣ね……」
「そうだね」
ゲームで見ていたから完全に実力とは言えないが、一応、宇宙の術法士でもある、ガイの弟子だから、転移陣の勉強もしたのだ。流石に自分で作ることは未だ出来ないけれど。
レックがレイナに尋ねる。
「あんたで最後か?」
「シフ……さんが未だいたけど。そういうことなら違う場所に飛んだのかも知れないわ」
レイナは何かを遠慮するかのように呼び方に迷った様子の後、シフをさんづけで呼んだ。宮廷術法士の一番弟子だと言うのと関係あるのか、シフ本人によるものなのかは解らなかったけれど。レイナの目には、シフの術法力は他の人とは違うものに視えているのかも知れない。
「そっか。でも何でシフのこと遠慮したみたいにさんづけで呼んだの?」
そう訊いてみると、レイナは小首を傾げながら答えた。
「よく解らないけど、不思議な光が視えるからかも知れないわ」
「そうなんだ。――じゃあ少し待ってみて、誰も来ないようなら先に行こうか。上に向かえば多分皆とも会えると思うし」
そう私が提案すると、レイナはうなずいた。
「うん」
「しかし何つーか、『術法士だけで攻略!』ってカンジだなこのメンツ。正しくは術法戦士だけどさ」
レックがぼやくように頭に手をやりながら言う。私はレックを横目で睨んで突っ込みを入れた。
「文句言わない。得意でしょーが」
「操作するのはな……」
「え? 何のこと?」
レイナが疑問符を浮かべていたので、私は軽く手を振って内輪の会話を打ち切った。
「あぁ、気にしなくていいから」