3 ストーリー
ズ―――ン・・・・・
どうやら、現実の方へと戻ってきたよだ。
ワキワキとしている竹橋を尻目に自身のからだのチェックを行う、何故か違和感が感じられるのはどうしてだろうか?
「で、どうだったよ。」
「あぁ?」
祐二め、知っていたら少しでも情報くれればいいものを・・。
まぁ、実際、聞いていてもやるべきことは変わらなかったはずだ。
時にはこういったハプニングの一つや二つ受け入れるのも楽しみだろう。
と思ってると竹原が上目づかいで覗き込んでくる。
「だ・か・ら、種族は何でちゅか?」
「殺されたい?」
「・・・・・・・」
祐二は黙って土下座してきた。どうやら、意外と怖い目で睨んで見ていたらしい。
話が進まないので、こちらから言いだすことにした。
「んん、まぁあれだな。凄いな。」
「な!そうだろ!!」
一気にテンション上がってきたなコイツ、扱いやすいというかウザったいというか・・
「で、マッちゃん。なんの種族にしたんだ?」
「ああ、ミイラ。」
「は、それモンスターじゃん。」
いや、お前こそ何言ってんだよ普通に何の種族か言ってるのにそれをモンスターとか言いだして、まぁ確かに魔物?みたいなRPGお約束のキャラだもんな。
「え、ミイラとか種族にあったの?」
「逆に聞くけどお前は?」
「いや、人族だけど?って、なに?なに!?イタッ!!!」
取りあえずコイツを一発殴っておいた。別に悔しくはない、だってミイラって優秀だぜ、滅茶苦茶ひんやり体験できるからな!いまひとつ決めたことは、必ずコイツをぶっ倒す。
「まぁ、それは良いとして、選択肢内容を教えてくれない?」
「獣人族・月狼、鬼人族、ミイラだな。」
「少な!!え、鬼人族!?レア種じゃん!なんでそれにしないの!!」
「は?それを言ったらミイラも・・」
「はいはいそれ、珍種ね~、フゴッ!!」
俺の拳が火を噴くぜ。
やはり、三つは少なかったようだった。そういえば、と思いフギンの問いかけの意味を聞いてみる。
「なぁ、フギンっていう奴にいきなり質問されたんだけどあれって何なんだ?」
「え、質問って、ただのステータス設定でしょ?あ、あれか道の問答!!」
「道の問答?」
やはり、コイツ知っていたのか、というよりも少しは教えてくれればいいものを。
そんなことを思いながら祐二の顔を見るが、ドヤ顔が気持ち悪かったので顔面にもう一発。
「へぶしっ!!」
「あ~あ、すっきりした。で、それはなんだ?」
「く~、良いパンチですね~。道の問答はランダム発生する摩訶不思議な問いでステータス設定が少々変わることがあるんだな~。」
「はぁ?それって不公平じゃねぇか。出なかったら何にもおこらないんだろ?」
「いや、その場合は、種族OR職業が一回だけランダムで選べれるようになってるのさ。」
「選択肢に出んのか?」
「そういうこと。」
「へぇ~、よくできてんな。」
つまりはあれだ。道の問答では問の答えに沿った選択画面が現れ、そのレア種、レア職を見たまんま選べるというわけで、ランダムの場合は運によるということか、確定した有限か無確定の無限のどちらがよいというのはないから不公平ではないように感じられた。
「なお、ゴールデンパッチではレア種ドラゴニュート、ハイエルフが選べるんだぜ!!」
「ゴールデンパッチって?」
「あれだよ、通常よりも高い金で特典がもらえる奴だ。お値段は通常の5倍、つまり50万だな~。」
高い、普通の人では手に届かない所に置くあたり運営も鬼と言うか仏と言うかいい塩梅だ。
結局のところ、金にものを言わせる人が勝つ、俺にとってはもう慣れっこなことだから、凄いとしか言いようがない。50万もかける人がこの世の中にいることも凄いと思う。
「ま、俺らには関係ないな。」
「悲しいこと言うなよ、親友~!!俺だって買いたかったのに~!!」
アホ言ってろ、そんな大金をゲームに使うのは勿体なさすぎる。
できるだけお金を使わずにゲームを楽しむことこそ遊びとして面白いと思える人の方が多いはずだしな。
調子よく機嫌が上がってきた祐二は、早速と次は職業のことについて聞いてくる。
「なぁ、JOBは何にした~?」
「剣術士だな。」
「タンクかい、あれ?というよりもマッちゃんMMO経験者?」
「いや、このジャンルはしたことないな。」
一年前のあれは、MMOとは言えるが所詮はただのボードゲームだった。
今やっているゲームとは天と地の差があるのは言うに事欠くまい。
「ふ~ん、オレもタンクだからなんか教えようか?」
「タンクねぇ、知識としては分かるんだが...そうだな、頼む。」
実質、初心者なのだから、ここは経験者から色々と聞いておく方が何かと都合が良いだろう。
「よしきた。タンクはそもそもMMOでは熟練者向きの仕事だ。何故か分かるか~?」
こうやって聞いてくるあたり上から目線と思うこともあるが、実際はこちらの意見が全くない話が無くなるように、身の入ったものにするためだ。
「確かヘイトだっけ、それを受け持つんだよな?」
「そそ、理解できてんじゃん、マッちゃん。」
「小説とかでよく聞くから自然と理解できるんだよ。」
ヘイト、ようは敵からの敵視、注目を持たれることである。
敵の注目度、ヘイトが多い者ほど攻撃されやすい、だからこそHPの多いタンクが受け持つのだ。
「ふ~ん。でだ、タンクは仕事があるんだけど、一つはさっき言ったヘイト管理、もう一つは敵から与えられる最大攻撃を事前に潰すといったことだな。」
「相手の最大攻撃を自身で受ければいいのか?」
「違う違う、相手の技を全員が回避できる環境にさせて置くんだよ。」
ヘイト管理は主にタンクの仕事で、例えば、ヒーラーの回復魔法で増加するヒーラーへのヘイトを自身へと向けさせるように敢えて危険を冒したりすることなど、自身にくぎ付けにさせることだ。
だが、やはりというか自身の知識の底が浅かったというか、祐二の説明に頭で理解できていなかったので、中途半端なことを言ってしまったら、当然のように違うと言われたどうやら、タンクはもっと奥深いものらしい。
「まずは、敵を見方の方へと向けさせない、ガチャガチャ動かない、避けるときだけ避ける、だな。」
「う~んっと、ま、詳しく説明してや。」
ハッキリ言って、やってみたこともないことなので聞いても分からない。
話が好きな祐二に任せる方が良い気がしたので見かけによらずキチンと話す祐二の話を聞いた。
「まず、MMORPGで大切なのはタンクが敵の正面で、後は全員後方に位置するのが妥当なわけだよ。」
「あれか?敵の視界に入らないようにするためとか?」
「う~ん、まぁそれもあるけどさ、一番は視界というよりもやりやすさがあるじゃんないかな?」
「何故疑問形なんだよ。」
これはあれか?みんなの中で大多数が受け入れやすいからそれが主流になっているとかそういうことなんだろうか、やはりこういうところは経験がなければ先に進まないな。
「タンクが傷を負えばヒーラーが直す、タンクはまた戦う、その繰り返しで、敵はタンクにくぎ付けじゃん?そうなるとさ、致死の攻撃さえなんとかすれば勝てる可能性は大だし、それが一番やりやすいんだよ。」
「まぁな、地味と言ってしまえばそれまでだけど、他の奴らが攻撃して、自身はガードに集中すれば何とか勝てそうなイメージはするな。でも、それ上手くいくわけ?」
「ま、他に沸く雑魚を倒したり、制限時間にホニャララとかあるけど基本はその二つだし、それらは決して揺るぎないぜ。」
「なるほどな。」
要は基本は基本である、とコイツは言いたいわけか。
さて、今はここだけを聞いてゲームを行うのが味わい方として最良だろう。
「わかった、後は自分で何とかする。」
祐二がニヤリと笑って、こちらに拳を向ける。
「おうよ、目指せトップランカーだぜ!」