12 ストーリー
お久しぶりです。あ~さ~です。
最近はアレですな、やむに已まれぬ事情があったわけです。
夜の7時。
辺りは少し暖かく風は涼しく、夜暗く街道沿いの店の光が道を灯す。
女子との合コンはまあまあな結果に終わり、男子連中のみでカラオケの二次会に行くことになったがそこはさすがにパスした。
ヤマちゃんに『じゃあな』と手を挙げながら帰路を歩く、スマホをいじっているUGも当然のようにこちらについてきた。
「え、祐二は行かねぇの?」
「いや、マッちゃん帰るならいいやと思って。」
何気に祐二はいつも俺に纏わりついているが、人当たりが良いから友人関係は他学部の連中とかも絡んでる。友人に関していえば俺よりも多いだろう。
だけど俺の近くにいるのは大学入学式の付き合いだからだろう。ホモなら殺す。
「そう言えば、マッちゃんさあ、千咲ちゃんのメアドとRINEのID聞いたんだろ?」
「千咲?ああ、加賀っていう娘な。そうだ、演劇部の紹介してくれるらしいんだよ。」
「演劇部?入部するの?」
「いや、しないな。どっちかってーと体育会系だし。」
演劇をやれるほど目立ちたがり屋じゃないからな。地道にじっくりコトコトとマイペースにサークルをやりたいしな。
というより、祐二はもっとうまく女子と話せるようになれっての。毎度、毎度、暑苦しいまでにアタックしてみたはいいが失敗しか重なってないし、もっと違う方法を見つけてほしいものだ。
「祐二もこれからオーディン?」
「そそ、オーディン、オーディン♬」
「まあ、俺は迷宮クリアしないと、何もできないから。さっさとクリアすっかね。」
「ダンジョンって結構いいアイテムとか落ちてるらしいから頑張れよ。」
ダンジョンの構造は簡単に言うとフロア毎にフロアBOSSと言われる強キャラが待ち構えているというありきたりなものだ。下に降りれば降りるほど相手が強くなるのは勿論のこと手に入る素材も良質になる。
ダンジョンマスターといわれる半ばチートっぽい敵はいないがLAST BOSSはいるようだった。
「階層って大体何階ぐらいだっけ?」
「え~っと、ルーン迷宮は25階。パンデモニウム迷宮が50階以上だったっかな。」
「最低限25階層はあるってことだよな。疲れるな。」
「その間に俺がJOB情報集めておいてやるよ。」
なんか頼りになるな祐二のくせに。
それはともかく祐二と別れて家に到着。
コンビニによって買った新商品の炭酸飲料を飲んで一息ついたところでオーディンのチョーカーをつける。
「“ダイブ、バルハラ”」
引きずり込まれるような感覚に身を任せるとボス部屋の出口扉で起きた。
「まるでトレジャーハンターだな。」
真っ暗にはならない程度の松明が点在している。階段も足元の数段しか見えない状態だ。
マジで恐い。ホラーゲームの要素が満載だなこのゲーム。
一度敵を見ているから、ある程度心の準備はできているが、位置までは一周目なので分からないから伸長に行くべきだろう。足音、そう足音に注意だ。
「一階の階層より暗いな。」
スケルトンは一対一なら余裕で倒せそうだが、はてさてそんなに都合よく通過できるか。
モンスターの系統とかあまり詳しくないから予測も立てられないな。
一通りの動作をその場で行い、ルーティンしたのちに足早に行動を開始した。
コツ....コツ....コツ....。
スケルトンだな、これは期待通り。
速度をグンと上げて急接近すると斧持ちのスケルトンが出てきた。
スケルトンもこちらを向いたが遅い。
速さに乗って力まずに相手を斬り裂いた。
『ビシャの通常攻撃。【剣術】の熟練値が1上昇。』
『スケルトンに9のダメージ。ほぼ変わりなし。グリーン』
スケルトンの斧の攻撃は当ての外れた位置に当たり、斧のノックバックで動作が鈍った。すかさず、相手の懐に入って小内刈りしたのち胸骨辺りを下に押して倒す。
あ、またやっちまった。
ゲーム内においてはたいして意味のない動作の一環だが、どうしても人型の敵だと無意識のうちに即時無力化を念頭に置いているような気がする。体術のスキルでも取っておくべきだったな。いや、だから違うって。
どうしようもないから斧を抑えてボコった。
なんか違うゲームだな。ヤンちゃんがリンチしている光景だよな。
スケルトンがポリゴンになって消えていくのを見ながら少しだけ気落ちした。
なんだかな~。
そうして歩いていくとまたもスケルトンがいた。今度は気づかれずに近寄ろう。
流石にすり足で移動するなんて言う高等歩行は身についていないが、さわり程度のすり足のテクニックとつま先歩行によりわずか2メートルまで悟られずに近づいた。
自分でもいうのもなんだが、こういう地味な技術だけは人一倍だ。
そして、間近でスケルトンを見ながらふと思う。
近づいても意味なくね?
馬鹿だろ。いや馬鹿なんだろう俺は。
スケルトンナイトの首を刎ねるように斬り裂き、攻撃されたのに気付いてこちらにかかってくるスケルトンの攻撃をカウンターする。
『ビシャの通常攻撃。【剣術】の熟練値が1上昇。』
『スケルトンに9のダメージ。ほぼ変わりなし。グリーン』
スケルトンを化け物と思いながらも人の括りにしてしまっている。
ゲームでありながら現実と等しく感じている。
ああ、気持ち悪い。
嫌悪感をぶつけるように鋭い返しでスケルトンを切り刻んでいった。
ガラガラガラ....。
俺は今、トロッコというものに乗っている。
ああ、どこまで話したらいいだろうか、二階のフロアは二つの道に分かれてて右か左か選ばなければならなかったのでとりあえず右を選んだ。そうして、トロッコを見つけ乗ってみた。
それが今の現状。
トロッコのレール下だけしか地面はなくあとは深い深い底になっている。
バッと顔をトロッコの中に戻す。
マジこわマジ恐い、マジ恐い、ヤバイ、ヤバイ。
恥ずかしい話、俺は高所恐怖症だ。
マジで恐い、ヤバイ、死ぬ、動くなじっとしてろ。
理性的に抑え込むが、はっきりと言おう。動けない、トロッコに乗ってしまったのが運の尽き、段々とスピードに乗っていくことに不安を抱えながらもゲームだからいいかなと馬鹿な考えそのまま乗っていたらなんだかよく分からないうちにデンジャラスな状況に陥った。
半ば思考停止になりそうになったが、俺の理性が許しはしなかった。
どういう状況か、どうなることが最悪か、どうすればいいか。
考えが海の彼方にまで広がりを見せた。
....とりあえず未だ動き続けるトロッコに命運を託すことにした。
谷底に落ちる勇気なんてないしな。
「帰りてぇ。マジで帰りてぇ。ログアウトしよっかな。でも、したらしたでトロッコが止まってしまいそうなんだよな。不安要素はなるべく避けるべきだよな~。」
トロッコのことをあえて考えて、現状から意識を無理やり切り離す。
そうして、10分。長く感じたこの時がすぎてまたも洞窟の中へと戻ったようだった。
そして、スピードもゆっくりと落とし始められた。
キイィイ、ガタン....。
さび付いた鉄のブレーキ音が奏でられ、ここはどこかと辺りを見回す。
「なんだ、ここは....。」
硬い岩石が敷き詰められただけの崖の上に立ち上がり、その先にある洞穴?を見る。
単純に言えば、埃や亀裂などはあるが立派な装飾が施された廊下が続いていた。
色々と不思議な世界だと思えばいいのか、単純にBOSS戦の準備をすればいいだろうか。
「どちらにしても今は行かないと、な。」
最低限の心構えとして罠に気を付けながら廊下を歩くと前、右、左と三つの扉があった。
前の扉を開いた。
扉の中を開くと部屋には宝箱が一つ置かれていた。
「なんなんだ、本当に....。」
部屋を見て回るが、特にこれといったギミックは作動せず、ただの部屋と化している。
まあ、宝箱を開けるのがトリガーになっている可能性は大に違いないのだが。
「ほかの部屋も調べてみるか。」
部屋の外に出ようとするが阻まれる。
「あれ?なんだコレ。」
どうやら、そこでの出来事が終わっていないとでも言っているかのようだ。その部屋でフラグを踏まない限り出してもらえないらしい。
振り返って、宝箱に近づく。
木の箱でできた宝箱。とても年季を感じる色合いだ。さて、これは定番の所でミミック、最悪は誘発爆弾だな。盗賊のピッキングスキルがあれば困ることもないのだろうな。
そろそろ、宝箱を開ける。
ガチャ。
『宝箱を開いた。』
「....。うん、お金と鉄の剣とバンダナがあるな。」
まさに、定番RPGのアイテムだった。アーウレシイナ。
必要なものなのでとりあえずいただいておく。アイテムを取り出すと手のひらに吸い込まれ、アイテム名が目の前に表示される。
『100$手に入れた。』
『アイロソードを手に入れた。』
『日陰バンダナを手に入れた。』
アイテム画面からアイテムの説明を見てみようか。そういえば、前のアイテムも見ていなかったからちょうどいいすべて見てみるか。
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〔所持品一覧〕←
〔パーソナルデータ〕
〔能力値・スキル〕
〔技能・EXTRAスキル〕
〔信仰・加護〕
〔パートナーモンスター〕
〔テイムモンスター〕
〔モンスター図鑑〕
〔フレンド・カンパニー〕
〔クエスト・ダンジョン〕
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そういえば、テイムという機能は何か特殊なクエストやスキルが条件だったりするのだろうか。
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所持品
一般
未知の蟻地獄の甲殻の欠片、スケルトンの骨、スケルトンの頭蓋、古代剣士の骨
装備品
旅人のマントE、麻の服E、麻のズボンE、獣皮の靴E、アインソードE、古びた剣、古びた大剣、アイロソード、日陰バンダナ
魔法石
火{0}、水{0}、土{12}、風{0}、雷{1}、光{0}、闇{0}、幻{1}
イベントアイテム
クーラスの香水
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未知の蟻地獄の甲殻の欠片:グレイアリジゴクと呼ばれる時折生まれる魔素の強い生物の甲殻の一部。
スケルトンの骨:丈夫な骨。
スケルトンの頭蓋:ちょっと不気味な頭蓋、夜になると稀に目に光がともりケタケタ笑う。
古代剣士の骨:魔力が深く馴染み少しクリスタル化した骨。
旅人のマント:旅人ご愛用のマント。少しぶ厚めなため寝るときにも大活躍。(練度3、耐久値235、物理防御3)
麻の服:平民階級の一般的な服。(練度3、耐久値235、物理防御3)
麻のズボン:平民階級の一般的なズボン。少しゴワゴワする。(練度3、耐久値235、物理防御3)
獣皮の靴:野犬の皮をなめした靴。(練度3、耐久値235、物理防御2、速度2)
アインブレード:タクガラ鉱石からできた剣。鍛冶師の土台打ちとして使われる。とにかく硬くて壊れにくい。(練度3、耐久値765、物理攻撃3)
古びた剣:スケルトンの剣。ちょっと腐食している。(練度-、耐久値20、物理攻撃4)
古びた大剣:スケルトンナイトの大剣。かつては名剣だったことがわかる。(練度-、耐久値100、物理攻撃20)
アイロソード:アイロン鉱石でできた剣。剣士の一般的な武器。(練度5、耐久値1200、物理攻撃6(+1))
日陰バンダナ:日の当たらない場所でのみ、自身の音、気配、温度、匂いの基本情報が半減する。
クーラスの香水:甲殻系モンスターが近寄らなくなる。
う~ん、はい。古びた系統の武器は多分【復元】とかそんな類のスキルによって本来の形に戻せるようになっていそうだ。それか、分解して使える部分をつなぎ合わせて完成品を作るのかのどっちかだろう。素材系統は絶対必要だし、今後もいろいろと集めておきたいところだ。
それとこの耐久値やら他の能力等は未だ理解が及ばない。STRと物理攻撃の違いがよく理解できないな。こりゃあ、もう一度サイトを確認する必要がありそうだ。攻略本でも公式が出してくれれば飛びつくが、そうそう簡単に攻略本なんて出るわけないしな。
そして今日になって色々とヤマちゃんや祐二と話していて分かったことなんだが、アイテムつまりは俺の所持品は画面上からも出せるという画期的な方法があるんだそうだ。方法は至ってシンプルで、取り出したいアイテムを選ぶ、承認する、目の前に出てくる、という手順だ。
なので、日陰バンダナを装着するために取り出す。
『日陰バンダナを取り出しますか?YES/NO』
YESボタンを押して日陰バンダナが現れる。さっとそれを首元に巻いてみたが何かしら変わったような実感はない。言い忘れていたが防具等を装備する際は、頭装備なら首から上に付ける必要があるそうだ。
とにかくとして、フラグは回収したので外へと出よう。
扉の外に出た。
『宝の間から出た。』
「え、あれ、ここって、砂漠?」
くっそ熱い砂が吹きあふれている。ヤバイ干からびる、いや初めから干からびているな。
ん、ここは砂漠だな、しかも地上には太陽が。
....どうやら、オーバーヒートへ無事に出られたようです。
なんというか、ダンジョン挑むぜ気分だったのに、いきなり当初の目的が叶ってしまった。
まあ、いいか。普通に考えてみれば、大多数で挑む存在に一人で戦いに行ったとか、とんだ馬鹿野郎だしな。ダンジョンの深みに入る前でよかった。
そういえば、ウォーターラクダがギルドへと帰っているはずなので救援が来るのではないだろうか。
いや、救援が来なかったら干からびて死んじまうな今度こそヤバイな。まあ、干からびているけどな!
どこへ行けばいいかはよく分からないが、帰るための努力はしようと思い砂漠を歩きだすが、いかんせん視野と足場が悪い。何度も休憩を取っているが、いつかは状態異常:熱中症みたいなものが出てくることやら、ここは本気で走って命を懸けてみるべき?
だが、と冷静になって考える。
今死ぬとしよう。そしたらどこへと帰るか、あの砂ボコりの避暑に違いないだろう。それはつまり現状の改善が全くなされないということになり、非常に最悪。そりゃだめだ。
そうして、アンニュイな気持ちになっていると上から大きな羽ばたく音が聞こえてきた。
大鷹とか目にない大きさの翼の音だ。
とっさに上へと顔を見上げる。
砂埃がひどい!!目がいたい!!超ぼやけてしか見えない!!
だが分かる、というより勘で理解できる。
竜だ!!
GYYYAAAAAA!!!
竦み上がるような鳴き声でこちらに迫りくる竜になんとか対処しなければとアインブレードを身構える。
畜生、こんなところで死んでたまるかよ。救援部隊はよ!!
そして竜がそれなりに近くになったところで足に力を入れて先制攻撃を入れようとした。
「ちょおおおおいいい、まてえええええい!!」
竜の方向から声が聞こえてきた。
その瞬間に感動が芽生えた。
この竜喋れるのか!!ものすっげぇええ!!と思っているとその竜の背中からめちゃくちゃかっこいいシルバーなフルプレート武装をした人間が後ろからでっかい槍をブンブン振り回していた。
こっちかよ。
「おおい、魔族の男よ。何故にそうガッカリしてんの?」
「え、だって竜が喋ったと思ったら、おっさんだったし。」
すると、シルバーな人は大槍をクタッとさせて、ぶつぶつと何か言いだした。
「(まだ20代だし、おっさんちゃうし、鎧付けて顔が見えてねえだけだし、彼女いねぇだけだし)」
「ああ、なんかごめん。」
未だ落ち込むシルバーな人は置いといて竜を触ろうとするが、威嚇されてしまった。なんだか猫がフシャーって威嚇している風景を思い出してしまった。このシルバーな人は王国の騎士団の一人なんだろうけど、騎士団には竜騎士もあるのかめっちゃ強そうじゃん。
「落ち着け、ガーク。お前も俺の許可なしにガークに触ろうとするなよ。」
そういうと竜、ガークはグルルと鳴き声を上げて落ち着いた。どうやら、勝手に人のリュウに触るのはマナー違反だったようだ。俺も竜欲しいなと思ってガークを見れば、こっち見んなと顔プイッと背けられてしまった。
「すまない、竜なんて初めて見たから興奮して。」
「竜初めて見たやつが怖がりもしねえのは珍しいな。」
ガークを撫でながらシルバーな人は、不思議そうにこちらを見てきた。と思うのだが、如何せん鎧装備であるためか威圧感があって値踏みされているようで居心地が悪い。というよりも鎧装備でここにきて大丈夫なんだろうか?掲示板では色々と面倒な状態異常が付くと書かれていたはずなんだが。
「剣術ギルドから助けに来た人ですよね?」
「そうだぜ。新人くんよ、受付の子が慌てふためいていたぜ?ま、初めて渡した仕事で死んでしまうなんて誰であっても慌てふためくだろうがな。」
「へえ、ジュリアさんが。それは悪いことしましたね。」
「というより新人君よ。何が起こったんだよ?」
「ええ、まあ色々と、お話はともかく....。」
「?」
「帰ってからにしてくれませんか?」
そろそろ本格的に熱中症で倒れるという馬鹿なことになりそうだ。
オーバーヒート付近の村に到着し、例の喫茶で一休みすることになった。喫茶のオヤジは俺のことを覚えていたらしくこちらに顔を向けるとニヤリと笑って会釈してきた。席に座った俺とシルバーな人、ジンは互いに紅茶を頼んで話をした。
「さっきの話に戻るとクエストは終わろうとしていたんですが、グレイアリジゴクの狩場に落ちてしまって。クーラスの香水もそれじゃ対応できないでしょ?」
「ラクダはだから戻ってこれたのか。新人くんは運がいいのか、悪いのか分からん奴だな。それでその後は?」
「必死に倒したから今があるんですよ?」
「よくもまあ。新人くんはまだ新人君じゃないのか?」
「新人ですけどね。そこは腕の見せ所ってやつじゃないですか?」
ジンは中々に話易い人で、王国騎士団の団員の一人であり、剣術ギルドから救難が出ていたの見て、助けに来てくれたそうだ。王国の騎士団もいろいろと大変そうで、貴族やら王族やらの派閥などもあってあっちはあーだこっちはこーだと暗躍なんてこともしょっちゅうでジンもいつも逃げるように訓練場か護衛任務や救助を率先してやっているそうだ。なんというか、憧れは憧れに過ぎないんだなって思った。
「でさ、最近よ~、最近、俺の護衛していた人物を同じ騎士が襲ってきてもう意味わかんなかったぜ。まあ、俺も殉職したくねえし、同じ騎士殺すのもあれなんだし捕まえただけにしたけどよ、あの時ほど貴族大概にしろ!と思ったことはないね。」
王国内には過激な貴族がいるんだな~、まさにテロリズムだな。
「ジンさん、貴族ってそんなにヤバイ連中がいるんですか?」
「まあ、タイプが色々あるけどよ。過激つったらバルザムス家とかフレイム二ル家とか、後はゲインザーク家ぐらいだな。陰険な家とかまだあるけど、ヤバイのはそこらへんだな。困ったら公爵家に行くか、ソードマン家に行く方が良いぜ。」
ソードマンか、剣聖の家系とかかな?ニュアンス的にそうっぽいんだけど。
可能な限り知るべきところは知っておかないとこの世界でいいように生きていけないよな。
「騎士団の試験ってどんなのがあるんですか?」
「ああん?興味あんの?やめとけって、俺が言うのもなんだけどめんどいだけだって。新人君はそうだな、黒騎士とかどうよ?騎士団から煙たがれるけどあれって中々収入いらしいしな。ガッポガッポだぜ。」
「いや~、試験内容が聞きたいんですよ。他の連中に情報として売れますし。」
「ああ、なるほどね。そんじゃお兄さんが!教えてあげよう。」
お兄さんって、まあ重要な点なのね。俺もそろそろおっさんの仲間入りになるから気持ちがいずれ分かってくるのかもしれない。まあ、従妹におっさんとか言われたら正直傷つくな。
「騎士団の試験っつうのは、大まかに三つあってな。筆記、実技、面談ってやつで、筆記はまあ騎士のJOBの理解度があるのか聞いてくるな、あと世界情勢とかも聞いてくるか。実技はまあ強さ測るだけだ、相手は騎士見習いから騎士団長まで色々だが、ある程度でいいから強さを見せること。あと最後の面談は特にいうことねえな、あんまり意味なしな。」
適当すぎる。そうは思いながらも目の前にいる人物は強そうなので本当にそれだけで見極めているんだろう。そうと考えれば、JOBをもう少し見直してランクを上げることがこれから必要となっていくな。
上位JOBとなると基本的に基礎にあるJOBのスキル・性能の強化は当然として前回は受けられなかったQUESTが受けられたりするしな。とりあえず、目標としてはJOBレベ上げとスキルの熟練度向上、戦闘効率のUPだ。
「最近じゃあ、騎士団員の数が防衛所の供給に足りてないから即時戦力供給OKな奴ならパパッと入団OKになりそうだけどな。」
「近いうちに戦争でもあるんですか?」
「あ、ああ、まあ民衆への影響もあっからここだけにしてぇんだけど。近いうちに攻めてくる国がいるからその付近の警護が厳しくなってんだよ。」
ファンタジー世界に来ても戦争は絶えないって、どんだけ争い好きなんだろうねニンゲン君よ。
哲学的に言うとしたら人は争いながら成長するってやつか?
ただまあ、ここはゲームの世界だから戦争ってやつもイベントっていう括り方でOKなのではないだろうか。王国を守るとか、仲良くなった人がいるからとかそんなもんに命は賭けたくはないが戦争っていうゲームを楽しみてぇな。破滅主義とか、戦争万歳なんて断固反対だけれどもだ、戦意っていうものをなえさせたくないのも事実なんだよな。
「それはまた、ジンさんは俺を助けたから警護に移るんですか?」
「かぁ!?俺はそんなに真面目じゃねぇって、ちょっとここで休憩してゆっくり帰って報告してから、ばれねえ程度にとんずらするだけだよ。」
ちょっと騎士団っていうのに不安を覚えてきた。
大丈夫か王国?




