ユリ、Coming soon??
医局に入ると、都合よく伊原圭は一人だった。「おう、雄大お疲れ。コーヒーでも飲むか?」頼むと言った俺は、ソファーに腰をおろす。ドリップコーヒーのいい香りが漂ってきた。
圭は鼻歌まじりに、コーヒーカップのソーサーを探している。こいつが、韓国ナンバーワンモデルの兄だって?雄大は圭をまじまじと見つめた。
圭は今年で俺と同じく28歳になる大学の同期だ。圭は16歳の年に親戚を頼って単身来日をし、日本で医大に入った少し変わった経歴の持ち主であった。
圭は身長186センチであるから、とても目立つ。雄大も、身長は178センチと決して低い方ではなかったが、圭と一緒にいると、自分がチビに思えた。圭の切れ長の涼しげな目に、やわらかい物腰は、まさに韓流スターを思わせた。
圭は俺にコーヒーを手渡し、自分も俺の前のソファーに腰掛けた。「あのさ、圭。お前の妹って有名人なんだってな。何でも韓国ナンバーワンモデルだって?ナースに聞くまで知らなかった。」
圭は俺に非難されたと思ったからか「別に隠してたわけじゃない。妹のユリは韓国にいるから、お前にわざわざ話す事じゃないしさ。それに、ユリは韓流の女優と違ってモデルだから、日本ではあまり知られていないから。」流暢な日本語で弁解めいた事を口にする。
「別に責めてないよ。ただ美人だから見たかっただけ。」コーヒーを飲み干しながら、圭が来週珍しく一週間も休暇を取っていた事を思い出した。どこか行くのか?まさか妹に会いに韓国へ?興味本位で聞く俺に、圭は週刊誌らしい雑誌を見せてきた。
「・・・。これ、韓国の雑誌か?俺にハングル文字が読めるわけないだろ?」「ああ、すまん。この記事にも書いてあるんだけど・・・。妹が体調というか、調子が良くなくて、しばらくモデル業を休業するんだ。で、マスコミには極秘で日本に来て、俺の所でしばらく静養させようと思って。」
圭の意外な言葉に興奮した俺は「いつ?いつ日本に?」自分でも、興奮して声が上擦っているのがわかった。
「来週だよ。だから来週休みとったんだ。」