お嬢様、それでは俺を殺せませんよ?
こんにちは(^^)美甘です!
3作目です。
よろしくお願いします。
「夜余。今日はストロベリーティーにしてもらったの」
そう言いながら、私・夜那は彼の様子を伺う。
「そうなんですね。本当だ、甘い匂いがする」
ティーカップに口をつけた彼を見て少し安心した私だったけれど。
「お嬢様……」
彼は、すっとティーカップを机に置いた。
「それでは、俺を殺せませんよ?」
ドクッ。
彼は優雅に微笑む。
危険だと頭が言っているのに、体が動かない。
そんな私に満足したように、彼は立ち上がって私を後ろから抱きしめた。
彼は私の首にナイフをあてる。
ヒヤリとする感触に私は初めて震えた。
♡♡♡♡♡♡
執事である夜余は私を殺そうとしている。
それを知った時、私は心臓が止まるかと思った。
あの時、夜余に髪を結ってほしいと言いに夜余の部屋に行ったのだが……。
「ええ。そろそろ頃合いですし、殺しますよ。……もちろんお嬢様は俺のことを信用しきっているので、ご安心を」
えっ……。
部屋の中から聞こえてくる夜余の声を偶然聞いてしまった私は慌てて口をおさえた。
少し扉が開いていたため、静かにのぞくと誰かと電話をしているようだった。
「ナイフでいいですか?一番殺しやすいので」
そう言った夜余はスマホを持っていない、もう片方の手にナイフを持っていた。
ギラつく刃に少し私の姿が映る。
あの言葉からして、私を殺そうとしているってことだよね……?
今までも何度か命を狙われる事はあった。
私は、宵宮家の娘だから。
いつもは、すぐに気づくの。
この人、私を殺そうとしているって。
私は勘が鋭いから。
だから警戒して、ボディガードに見張ってもらって、殺されそうだったら、すぐに取り押さえてもらってそのまま殺してもらうのだけど。
夜余が私を殺そうとしていたのは、気付かなかった。
5年も一緒にいたけれど。
「お嬢様。今日もかわいいですよ」
「髪、結いますね」
「お嬢様といる時間が一番楽しいかな」
同い年で、私に微笑みを向けてくれる夜余の事が私は好きだ。
好きなあなたには、ボディガードに殺されてほしくない。……跡形もなく刻まれてしまうから。
でも、私を殺すのはやめてほしい。
だったら……
私が夜余を殺そう。
殺したら、夜余は私を殺すことができないし。
跡形もなく刻まれることもないし。
私なら苦しませないであげれるし。
うん。今夜殺すか。
私は、準備をするために、夜余の部屋から離れた。
宵宮家は殺し屋の家系であった。
そのため、夜那は夜余を殺すことに抵抗がなかった。
ーーたとえ好きな人であっても。
♡♡♡
その日の夜、いつものように夜余と紅茶を飲むために部屋へ呼んだ。
いつものことだから、警戒されてはいないと思うけれど。
紅茶に甘い毒を混ぜたので、気づかれないようにストロベリーティーにした。
「夜余。今日はストロベリーティーにしてもらったの」
そう言いながら、私は彼の様子を伺う。
「そうなんですね。本当だ、いちごの甘い匂いがする」
警戒されてないみたい。
私が一口飲んだのを見届けた後、ティーカップに口をつけた彼を見て少し安心した私だったけれど。
「お嬢様……」
彼は、すっとティーカップを机に置いた。
えっ……。
「それでは、俺を殺せませんよ?」
まずい。気が付かれた。
安心してる場合じゃなかった。
なら、最終手段。もうナイフで刺しちゃおう。
そう思ったのに。
ドクッ。
彼は優雅に微笑む。
彼の瞳に私がとらえられ、危険だと頭が言っているのに、体が動かない。
カラン。
ポケットからナイフを取り出したのに、落としちゃったし……。
そんな私に満足したように、彼は立ち上がって私のナイフを拾った。
そのまま私を立たせて抱きしめる。
「ねえ、お嬢様」
彼は私の首にナイフをあてる。
ヒヤリとする感触に私は初めて震えた。
「愛してるよ」
え……っ。
そこで私の意識は途絶えた。
♡♡♡♡♡♡
ああ……。かわいい。
ほんとかわいい。
意識を失った今、俺に体を預けているお嬢様はとてつもなく、かわいい。
んー。
睡眠薬、紅茶に混ぜといて良かった。
もし毒が効かなかったり、バレたりしたら、お嬢様はこのナイフで俺を刺そうとしたんだよね……。
ああ。刺されても良かったかも。
かわいいかわいいお嬢様になら。
あ、でも刺されちゃったら、死んじゃうかもしれないし……。
死んじゃったら、お嬢様は誰かのものになっちゃうかもしれないし……。
それだけはダメだよね。
お嬢様のかわいい姿を俺以外のヤツが見るなんて許せないし。
大体、なんで主人は夜那のこと詳しく知っているわけ?
俺が夜那を好きだからってからかってくるし。
こうなった原因だって主人のせいでもあるし。
「お前もさっさと奪わないと他の男に取られるぞ。……お嬢様を」
俺の主人は夜那の父親と仲のいい殺し屋だ。
お互い殺し屋だからと仕事について語っているし。
今日も電話ごしにからかわれて、少し反ギレで言った。
「ええ。そろそろ頃合いですし、殺しますよ。……もちろんお嬢様は俺のことを信用しきっているので、ご安心を」
電話の向こうで主人はガハガハと笑う。
「おいおい、夜那ちゃんのこと好きで狙っているヤツ全員殺すつもりかっ!やめろやめろ。後始末は大変なんだ」
そんなことしらねーよ。
「ナイフでいいですか?一番殺しやすいので」
邪魔なヤツは殺せと教えたのは主人だろ。
「おい。本当にやめとけ。夜那ちゃんに報告するぞ。執事も解雇できるんだからな、こっちは」
権力っていいよねー。
ガタッ。
その時、俺の部屋から遠ざかっていく足音が聞こえた
ああ……お嬢様、聞いちゃったか……。
今聞いた内容だけだと誤解されているかも。
お嬢様を殺すつもりはないんだけどな……。
結婚相手に俺以外を選ばない限り。
「分かってますよ。冗談です。では」
主人の電話を切り、考える。
お嬢様は殺し屋の娘。
殺すことに抵抗はない。
嬉しいことに俺のこと好きみたいだし。
今までのバカな奴らは、ボディガードたちに殺させていたけど、俺を殺すなら自分で殺しにきそう。
実行するのは、多分、寝る前のティータイムだな。
俺の紅茶だけに毒を盛って。
あ、でも毒で俺を殺せなかった場合も考えてナイフ潜ませてそう。一旦落ち着かせるために眠らせたいな……。
うん。睡眠薬をお嬢様の紅茶に混ぜとこう。
そして現在に至る。
わざとかな、わざとだよね。
眠っているはずなのに、俺の体に胸当ててるの。
息もはあはあして、ちょっと熱っぽそうなの。
俺を興奮させたいのかな?
あ、断じて媚薬は混ぜてないよ?たぶん。
ちょーっとお嬢様をかわいくしようと睡眠薬と一緒に甘い薬も混ぜただけ。
「夜余……」
あ、起きちゃったか……。
「何ですか。お嬢様」
お嬢様には完璧な執事としてご奉仕しないとね。
お嬢様が満足するまで……
「睡眠薬と媚薬混ぜたでしょう」
「ええ」
「悪いけど、効かなかったわよ」
そう思っていたけれど。
すっと俺の腕から出るお嬢様。
そうでした。お嬢様は薬や毒が効かないのでしたね。
でも優しいお嬢様は俺の茶番に乗ってくださった。
ーーまあ、こうなると分かっていて盛ったのですけれど。
「あと……なんで殺さなかったか、説明してくれる?」
「はい。お嬢様」
もちろんです。
♡♡♡♡♡♡
夜余から全てを聞いた私は謝った。
勝手な勘違いで、殺しそうとしてごめんねと。
そんな私に夜余は微笑んで、勘違いさせるようなことをしてすみませんと謝ってきた。
誤解は解けて良かったのだが……。
「夜……夜余が私のことを好き……っ!?」
「はい。愛しています」
あ……愛してるよって幻聴じゃなかったんだ……。
「わ……私も愛してます。夜余のこと」
すぐに返事したのは間違いだったかもしれない。
「夜那。かわいい」
「ねえ、誘ってる……?」
「これからはお風呂に入る時も寝る時も全部一緒に過ごしましょうね」
だって、言うこと聞かないとナイフ持って抱きしめてくるんだもん……っ!
まあ、好きだから許すけど。
まあ、私の言うこと聞いてくれなかったら、殺すから……お互い様だし許すけど。
「夜那。俺以外は愛さないでくださいね。触れないでくださいね。見ないでくださいね」
「さすがに見ないのは無理じゃない?」
「じゃあ監禁しましょうか。俺しか見れないように」
「本当にやったら夜余のこと、殺すからね」
「ああ………夜那に殺されるなら俺を縛ってからにしてもらいたいですね……(うっとり)」
「私が悪かった。夜余以外は好きにならないから安心して」
「ん……好き……夜那」
今、すごく幸せ。
夜余の主人もお父様も私達が交際するの認めてくれたし。
「ああああ。夜那ちゃん、俺の息子を頼んだよー!」
まさか夜余の主人がお父様の殺し屋仲間の狂宮さんだったのは驚いたけど。
「ま、こうなると思ってたよ」
お父様は私と夜余が両想いなの分かっていたみたいだし。
「ねえ、夜那。俺、これからは執事としてじゃなく、婚約者として夜那を守りますので……。安心して」
隣にいる私の大好きな人はそう言ってくれる。
「ふふっ。ありがとう。私も夜余のこと守るよ。最近苦しませて殺す毒の作り方、学んだの」
「そうなんですね。ぜひ今度、俺の食事に盛っておいてください」
「盛らないわよー」
私に微笑んでくれる。
愛してくれる。
私の大好きな人。
あ、でも。
大好きだから……私以外は愛さないでよね?
浮気なんかしたら……キスしながら口に毒を入れて……
殺してあげるんだから。
♡♡♡♡♡♡
「夜那……」
眠った夜那の頭を撫でてそう呼ぶ。
「ん……」
すると、眠っているはずの夜那は俺の手に擦り寄ってくる。
「いい子ですね……」
やっと俺のものになってくれた愛しい彼女。
これなら、俺がどんなにあなたを愛しても、好きだと言っても、俺の闇を見せても、好きだから一緒に死のうと言ってもあなたは笑って許してくれる。
ーー俺を愛してくれているから。
だからね?
俺を殺すなんて、もう考えられないでしょ?
俺が夜那を愛しているかぎりは。
「ははは」
そう思い、寝ている彼女の首にナイフを当てる。
「夜……余……?」
「愛しています。夜那」
ね、抵抗もできないでしょ?
俺のこと好きだから。
俺が愛してると言っているから。
殺し屋の娘と言っても、やっぱり人間だよね。
愛している人でも、仕事では関係ない。
悪魔のような心を持っておかないと……。
まあ、そんなこともできない彼女を俺は愛しているんだけど。
あ、でも頭ではどう殺そうか考えているみたい。
ナイフを首に当てられているのに、冷静だな。
そういうところも好き。
でもね、考えているだけじゃダメなんだよ。
ほら、今も俺に見つめられているだけで、照れちゃっている。
そんなんじゃ……
「お嬢様、それでは俺を殺せませんよ?」
愛しているよ。夜那。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
よければ、評価・リアクションをしていただけると嬉しいです(^^)感想もお待ちしています。
よろしくお願いします。
あと……
不穏な終わり方をしてしまい、すみません!
ハッピーエンドを望まれた方、すみません!
(補足)
夜余はもともと夜那を殺せと命令されています。
でも、夜那を好きなのは本当です。
夜余はヤンデレなので……夜那の死体姿でもかわいいと言える人です。
追記
ハッピーエンド編も投稿しました!
ぜひ読んでみてください(^^)
※これは物語です