3.Cinder blocks are keeping me inside
「やめろ!どうしてお前はそんなにイカれてやがるんだ!……ってベットが生きてたら、そう言ったかもな」
命からがら逃げ延びた森の中
私はベットの亡骸から拾い上げた、血に濡れたテンガロンを被った
どうしてこんな価値の無い物を拾って逃げてきたのか自分でも解らないが、そうする事が一番正しいように思えた
吸い殻を地面に投げ捨てる
降り出した雨に、煙草の火は既に消えていた
全身が血と泥に塗れていたが、痛みは色々な薬物が消してくれていた
いまや薬物だけが、私の唯一の相棒だった
あるいは最初からそうだったのかも知れない
またしても『私』なんて自分を呼ぶようになっちまったが、今やその方が相応しいように思えた
もしかして『俺』なんて名乗ってベットと犯罪旅行をしてた時は、本当は無理をしてたのかも知れない
「いたぞ、あそこだ!」
声が聞こえる、追手が私を見付けたのだろう
一番すばしっこいヤツは既に私に追い付いたらしい
きっとこれが人生最後の戦いになるだろう
「ただじゃ死なねえ」
私の中にある『俺』の部分を振り絞って私は呟いた
「ベットの最期に釣り合うような、面白えパーティーにしてやる」
一人で戦うのは初めてだ
私は涙を流していた
多分私はいま、ここで死ぬ
残酷に
死に際のベットを思い出した
あいつは全身に余す所なく銃弾を浴びながら、私をかばった
何かを言おうとしていた
どうせ「お前だけは幸せに生きろ」とかだろう
そんな事、お前がいないと私には出来ないのに
次から次に敵さんが集まってくる
「来やがれ!」
私は猫背になりながら、両手で銃を構えた
男達が続けざまにこちらに向け発砲する
これで終わりか
もっと色々旅をしたかったが、すぐに私は同じ場所に戻ってきてしまった
私の撃った弾は一人として殺す事はなかったようだった